「彼はあなたを引き裂きたいそうよ」
「わ、悪かった、俺が悪かった! だからやめてさせてくれ!」
「申しわけございません、やめてください、でしょ?」
燈子が指摘すると、益本は悔しそうに顔を歪めた。
「申しわけございません、やめてください!」
『……どうする』
「やめてあげてください」
『わかった。だが、言っておいてやれ。次に同じことをしたら間違いなく喉笛を食いちぎってやると』
燈子は彼の言葉をその通りに伝えた。
益本はがくがくと声もなく頷く。
颯雅が警戒しながらも離れた直後、益本は脱兎のごとく走り出す。
「あきれた、さっきまでの威勢の良さはなんだったの」
『しょせんその程度の小物だ。異能部隊の隊長に言っておかねばならんな』
「そうしてください。シロマツは獣医に見ていただかないとね」
声をかけられたシロマツは、きゅうん、と鳴いて燈子に寄り添った。
『お前のケガも心配だ』
「ケガなんてしてません」
『手をすりむいている、医務室へ行くぞ』
「こんなの平気です。それよりシロマツを——いたっ!」
歩き出そうとした燈子は、足の痛みに座り込んだ。
『どうした、どこが痛い?』
「倒れたときに足をひねったみたいです」
足をさする燈子に、颯雅は悔し気に唸る。
『俺が人間なら抱いて運んでやったものを』
「なんですか?」
颯雅のつぶやきは小さくて聞き取れなかった。
『なんでもない、歩けないなら人を呼ぶか?』
「大丈夫です、医務室までくらいなら」
燈子はまた立ち上がり、颯雅を見た。
『ゆっくり行こう。無理はするな。そうだ、俺の背に乗ってみてはどうだ?』
「ありがとうございます、でもお気持ちだけで」
もし自分が背に乗って、彼が重さでつぶれてしまったらと思うと安易にお願いしますとも言えない。
燈子とともにゆっくり歩く颯雅の背を、益本が陰から睨みつけていた。
第四話 終
「わ、悪かった、俺が悪かった! だからやめてさせてくれ!」
「申しわけございません、やめてください、でしょ?」
燈子が指摘すると、益本は悔しそうに顔を歪めた。
「申しわけございません、やめてください!」
『……どうする』
「やめてあげてください」
『わかった。だが、言っておいてやれ。次に同じことをしたら間違いなく喉笛を食いちぎってやると』
燈子は彼の言葉をその通りに伝えた。
益本はがくがくと声もなく頷く。
颯雅が警戒しながらも離れた直後、益本は脱兎のごとく走り出す。
「あきれた、さっきまでの威勢の良さはなんだったの」
『しょせんその程度の小物だ。異能部隊の隊長に言っておかねばならんな』
「そうしてください。シロマツは獣医に見ていただかないとね」
声をかけられたシロマツは、きゅうん、と鳴いて燈子に寄り添った。
『お前のケガも心配だ』
「ケガなんてしてません」
『手をすりむいている、医務室へ行くぞ』
「こんなの平気です。それよりシロマツを——いたっ!」
歩き出そうとした燈子は、足の痛みに座り込んだ。
『どうした、どこが痛い?』
「倒れたときに足をひねったみたいです」
足をさする燈子に、颯雅は悔し気に唸る。
『俺が人間なら抱いて運んでやったものを』
「なんですか?」
颯雅のつぶやきは小さくて聞き取れなかった。
『なんでもない、歩けないなら人を呼ぶか?』
「大丈夫です、医務室までくらいなら」
燈子はまた立ち上がり、颯雅を見た。
『ゆっくり行こう。無理はするな。そうだ、俺の背に乗ってみてはどうだ?』
「ありがとうございます、でもお気持ちだけで」
もし自分が背に乗って、彼が重さでつぶれてしまったらと思うと安易にお願いしますとも言えない。
燈子とともにゆっくり歩く颯雅の背を、益本が陰から睨みつけていた。
第四話 終



