翌日、燈子は颯雅と功之輔とともに車で出勤した。
燈子と颯雅を駐屯所に置いた車は功之輔を乗せて陸軍本部に向けて走り出す。
記者たちは今日もいたが、昨日の失礼な記者がいなくて少しほっとした。
駐屯所の玄関をくぐり、颯雅はふと燈子を見上げた。
『お前、まともな着物を持っていないのだな』
「すみません、今日もお母様の着物をお借りして」
上等の絹で仕事に出るなんて申しわけない。お給料が出たら安い綿の着物を買って仕事着にしようと思った。
『かまわん。母も気にしないから』
つっけんどんに言う彼はぷいっと背を向けて先に歩き出す。
燈子は慌ててあとをついていった。
まずは彼の所属する部署で朝礼に参加する。
制服の男性ばかりの中で唯一の女性、しかも着物で参加している自分は明らかに浮いていて、居心地が悪かった。
朝礼では司令が燈子を紹介してくれた。
「彼女は通訳でもあるが、綾月大尉の婚約者でもある。失礼のないように気を付けろ」
最後のひとことで、どよめきが起きた。
「大尉の婚約者!?」
「本当に!?」
「婚約は公表されていない。内密にするように」
司令がひとにらみすると、それだけで静寂が戻った。
朝礼ののちは訓練場となっている広場に出た。
木陰で見ているように言われ、借りた敷物を広げて座る。
燈子と颯雅を駐屯所に置いた車は功之輔を乗せて陸軍本部に向けて走り出す。
記者たちは今日もいたが、昨日の失礼な記者がいなくて少しほっとした。
駐屯所の玄関をくぐり、颯雅はふと燈子を見上げた。
『お前、まともな着物を持っていないのだな』
「すみません、今日もお母様の着物をお借りして」
上等の絹で仕事に出るなんて申しわけない。お給料が出たら安い綿の着物を買って仕事着にしようと思った。
『かまわん。母も気にしないから』
つっけんどんに言う彼はぷいっと背を向けて先に歩き出す。
燈子は慌ててあとをついていった。
まずは彼の所属する部署で朝礼に参加する。
制服の男性ばかりの中で唯一の女性、しかも着物で参加している自分は明らかに浮いていて、居心地が悪かった。
朝礼では司令が燈子を紹介してくれた。
「彼女は通訳でもあるが、綾月大尉の婚約者でもある。失礼のないように気を付けろ」
最後のひとことで、どよめきが起きた。
「大尉の婚約者!?」
「本当に!?」
「婚約は公表されていない。内密にするように」
司令がひとにらみすると、それだけで静寂が戻った。
朝礼ののちは訓練場となっている広場に出た。
木陰で見ているように言われ、借りた敷物を広げて座る。



