婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 いじめは日常茶飯事。だけど彼女らに自分を傷付けることなんてできない。
 なぜなら心は自分だけのもの。
 傷付いてなんかやらない。だから私はずっと勝っている。
 そうよね、お母様。
 燈子は胸の中の母に呼びかけた。



 お昼過ぎ、燈子は父の書斎の掃除に向かった。
 今日は土曜日。半ドンで父や真世がもうすぐ帰って来る。その前に書斎の掃除を済ませてしまいたかった。

 半ドンは正午に鳴る大砲にちなんだ言葉で、土曜日はこの号砲を合図に半日で仕事や学校が終わることから半ドンと言われている。
父の書斎を掃除する唯一の利点は新聞を読めること。燈子が世界と触れられる接点は日常の買い物と新聞、そのふたつだけだから。

 書斎の文机に置かれた新聞を手に取った瞬間、びくっとして取り落した。
「なんだ、犬じゃないのね……」

『帝都にあやかしの群れ出現! 帝国の守護神が活躍!』
 大きな見出しとともに載っている写真は白い狼。実際には白銀の毛並みで、とても美しいのだという。
 狼は写真越しでも眼力がすさまじく、ぴりりと電気が走った感覚があって目が離せない。