『なにを勝手に!』
 吠え声に、功之輔は燈子を見る。
「息子はなんと?」
 燈子は内心でにやりと笑った。

「嬉しいそうです」
『な!』
 颯雅は驚きで言葉をなくす。

「そうか、嬉しいのか」
 両腕を組んで目を細める功之輔に、颯雅は慌ててわうわうと吠える。
『違う、喜んでない、絶対に縁談は断ってくれ!』
「まあそんな。絶対に縁談を進めてほしいだなんて」
 燈子は照れたように頬に手を当て、目をそらす。

『なにを言うんだ、貴様!』
「こんなに乗り気なのは初めてだ……。気が変わらないうちに話をまとめましょう。そうだ、燈子さんにはすぐにでもわが家へ来ていただきたい」
「いいんですか!?」
 燈子は目を輝かせた。

『親父殿、やめてくれ!』
「ご子息はぜひにとおっしゃってくれています」
 燈子の通訳に、颯雅はあんぐりと口をあけて燈子を見た。
 燈子は照れたふりをして両手で顔を覆い、にやりと笑った。