「どうした有り様だ、真世」
父がおろおろと尋ねると、真世は目に涙を浮かべて言った。
「燈子がいきなり襲いかかってきて、私にはなにがなんだか……」
「そうなんです、勝手に木の枝を切った燈子様を真世様が注意なさったら、怒って池の水を真世様にかけて、さらにはさみで……」
喜美が続け、わーっと泣きだす真世に燈子はため息をつく。
「私が髪を切られそうになっていたの、お父様も見ましたよね?」
「整えてあげようとしただけよ!」
「真世は優しいわね。それに比べてお前は!」
「落ち着いて、ふたりとも。燈子、乱暴はいけないよ」
憤慨する麻子におろおろとうろたえる正雄。燈子は再びため息を吐く。
結局はこれだ。父はいつも強い方、つまりは真世たちの味方ばかりする。
『みっともない』
聞こえた声に顔を上げると、狼と目が合った。狼は素知らぬふうで目をそらした。
隣の男性が言ったとも思えない。では狼の彼が言ったのだろう。なんと失礼だろうか。
「とにかくふたりとも着替えてきなさい」
正雄に言われ、真世は喜美の手を借りて立ち上がると、燈子をにらんでから立ち去った。
燈子は狼と男性に会釈をして、庭から回って玄関から自室である物置へ向かった。
いつもの擦り切れて継ぎの当たった着物に着替えた燈子は、髪を乾かす間もなく座敷に向かった。池の生臭い水の臭いがするが、仕方がない。
「ただいま参りました」
縁側で膝をついて声をかけると、入れ、と返事があった。
障子を開けると、不機嫌そうな麻子と真世、おどおどした正雄がいた。
上座には堂々と座る男性と狼。
父がおろおろと尋ねると、真世は目に涙を浮かべて言った。
「燈子がいきなり襲いかかってきて、私にはなにがなんだか……」
「そうなんです、勝手に木の枝を切った燈子様を真世様が注意なさったら、怒って池の水を真世様にかけて、さらにはさみで……」
喜美が続け、わーっと泣きだす真世に燈子はため息をつく。
「私が髪を切られそうになっていたの、お父様も見ましたよね?」
「整えてあげようとしただけよ!」
「真世は優しいわね。それに比べてお前は!」
「落ち着いて、ふたりとも。燈子、乱暴はいけないよ」
憤慨する麻子におろおろとうろたえる正雄。燈子は再びため息を吐く。
結局はこれだ。父はいつも強い方、つまりは真世たちの味方ばかりする。
『みっともない』
聞こえた声に顔を上げると、狼と目が合った。狼は素知らぬふうで目をそらした。
隣の男性が言ったとも思えない。では狼の彼が言ったのだろう。なんと失礼だろうか。
「とにかくふたりとも着替えてきなさい」
正雄に言われ、真世は喜美の手を借りて立ち上がると、燈子をにらんでから立ち去った。
燈子は狼と男性に会釈をして、庭から回って玄関から自室である物置へ向かった。
いつもの擦り切れて継ぎの当たった着物に着替えた燈子は、髪を乾かす間もなく座敷に向かった。池の生臭い水の臭いがするが、仕方がない。
「ただいま参りました」
縁側で膝をついて声をかけると、入れ、と返事があった。
障子を開けると、不機嫌そうな麻子と真世、おどおどした正雄がいた。
上座には堂々と座る男性と狼。



