庭を見るとりんごの花が咲いていた。白くまるっこい花びらのところどころに挿し色のようにピンクが混じり、葉の緑とのコントラストも美しい。
りんごは和りんごと西洋りんごがあるが、ここにあるのは西洋りんごで、開国と同時期に暁津洲帝国に入って来たものだ。
燈子が生まれたころに母が苗木を植えた。なった実はすっぱくて食べられたものではなかったが、蜂蜜で煮るととてつもなく美味しくなって燈子の好物になった。
母との思い出の木であることは麻子たちには言っていない。言えば切られてしまうだろうから。
燈子は鋏をもってきて庭に降りると、ひと枝をぱちんと切った。
「お母様、うまくいくように見守っていて」
枝を耳の上あたりに挿して池をのぞきこむ。
多少は見栄えがすると思う。母がかつてほめてくれた黒髪にりんごの花がかわいらしい。
「なにしてるのよ」
声に振り返ると、真世が縁側に立っていた。
すぐ隣には喜美がいて、にやにやとこちらを見ている。腰ぎんちゃくの彼女は真世の前ではことさらに意地悪だ。そうして真世の機嫌をとっては菓子やいらなくなった装飾品などをもらっているらしい。
「花なんか挿しても似合わないわよ、みっともない!」
鼻にしわを寄せて意地悪く笑う真世に、燈子は返事をしなかった。真世を避けて家に上がろうと玄関に向かう。
「待ちなさい、その花は私の家のものよ。あんたなんかが勝手に使っていいものじゃないの!」
怒鳴り声に、かっと頭に血が昇った。
「この木はお母様が植えてくださったのよ! あなたのものじゃないわ!」
叫んだ直後、はっとした。
真世の顔にはあやかしよりも恐ろしい笑みが浮かんでいる。
りんごは和りんごと西洋りんごがあるが、ここにあるのは西洋りんごで、開国と同時期に暁津洲帝国に入って来たものだ。
燈子が生まれたころに母が苗木を植えた。なった実はすっぱくて食べられたものではなかったが、蜂蜜で煮るととてつもなく美味しくなって燈子の好物になった。
母との思い出の木であることは麻子たちには言っていない。言えば切られてしまうだろうから。
燈子は鋏をもってきて庭に降りると、ひと枝をぱちんと切った。
「お母様、うまくいくように見守っていて」
枝を耳の上あたりに挿して池をのぞきこむ。
多少は見栄えがすると思う。母がかつてほめてくれた黒髪にりんごの花がかわいらしい。
「なにしてるのよ」
声に振り返ると、真世が縁側に立っていた。
すぐ隣には喜美がいて、にやにやとこちらを見ている。腰ぎんちゃくの彼女は真世の前ではことさらに意地悪だ。そうして真世の機嫌をとっては菓子やいらなくなった装飾品などをもらっているらしい。
「花なんか挿しても似合わないわよ、みっともない!」
鼻にしわを寄せて意地悪く笑う真世に、燈子は返事をしなかった。真世を避けて家に上がろうと玄関に向かう。
「待ちなさい、その花は私の家のものよ。あんたなんかが勝手に使っていいものじゃないの!」
怒鳴り声に、かっと頭に血が昇った。
「この木はお母様が植えてくださったのよ! あなたのものじゃないわ!」
叫んだ直後、はっとした。
真世の顔にはあやかしよりも恐ろしい笑みが浮かんでいる。



