その頃、悠真・玲央・遼・碧の泊まる男子部屋では――
なぜか静かに 枕投げ が始まっていた。
ぽすっ…ぽすッ。
玲央が冷静な顔で枕を投げ、
遼がそれを華麗に避け、
碧は笑顔で受け止め、
悠真はなぜか全力で投げ返している。
「てかさぁ、椿遅くない?」
悠真が枕を抱えながら首をかしげる。
遼はベッドに寝転んだまま、ニヤリとした。
「さぁなぁ~。美羽ちゃんと、よろしくやってんじゃね?」
「は!?!?
僕の美羽ちゃんが椿に襲われてるってこと!??
ちょっと待ってそれは由々しき事態だぁ――!」
悠真が本気で飛び出していこうとしたその瞬間、
ぼふっ!!!
玲央の枕が悠真の顔面にクリーンヒット。
「落ち着け。問題はないと椿から連絡が来ている。
雨宮美羽は風呂でのぼせたらしい。」
「ええ!?のぼせちゃったの!?かわいそうにぃ~
美羽ちゃあああん!!」
悠真は泣きながら碧に枕を投げた。
碧は柔らかく笑って受け止め、
「長風呂はよくないですからね。
美羽さん、色々あったので疲れてたのでは?」
と優しい声で返しながら遼へ枕を投げた。
遼はそれをヘディングで受けながら言う。
「まぁ、のぼせるにも“いろんな意味”があるけどなぁ〜?」
「なんだよ!遼!!破廉恥だぞっ!
美羽ちゃんがそんなやらしい子なわけないだろ!!!」
「ははっ、冗談だっての~!」
「そんな遼には擽りの刑だ!!この!このぉ~!!」
「あはは!お、おい悠真、やめろよっ~!」
男子組は騒がしく枕をぶん投げ続け、
布団の上は羽毛がふわふわ舞い始めていた。
ところ、変わって女子部屋では。
莉子は布団にもぐりながら、
「もう、美羽ったら…椿くんといるみたいだしいいけどさ~。
皆~美羽、帰ってこないし……先にもう寝よ~?」
とクラスメイトたちに声をかけ、電気を消した。
部屋はすぐに寝息の海になった。
*そして、美羽と椿は…
誰もいない特別室のベランダ。
秋の夜風がそっと流れ、外から虫の声が聞こえる。
鼻血もすっかり止まり、美羽は夜空を見上げていた。
「わぁ……綺麗……」
星が、京都の空に吸い込まれるように瞬いている。
椿はその横顔をちらりと見て、くすっと笑った。
「美羽、もう大丈夫なのか?」
「う、うん……ありがと、椿くん。」
美羽はまだ頬が少し赤い。そのくせ目はきらきらしていた。
「――あっ!流れ星!」
美羽は慌てて手を合わせる。
椿は苦笑しながら言った。
「はは、早すぎて間に合わねぇだろ。
で?何願ったんだ。」
「い、言わないよ!言ったら叶わないでしょ!」
ぷいっとそっぽを向く美羽。
その仕草があまりに可愛くて、椿は喉の奥で笑った。
「美羽。」
「な、何、椿くん?教えないよ?」
ゆっくり美羽が振り向いた瞬間――
椿はひとつ深い息を吸った。
「少しだけ目、瞑れ。」
「えっ?な、なんで!?」
「いいから。」
言われるまま美羽はぎゅっと目を瞑る。
夜風の冷たさと、胸のどきどきだけが身体を巡った。
「……開けていいぞ。」
美羽はそっと瞼を上げた。
その刹那。
左手の薬指が、きらりと光った。
「え……っ……!?
つ、椿くんこれ……!!!?」
小さな銀の指輪。
星空の下で溶けるように輝いている。
椿は指先で自分の左手を見せた。
そこにも同じ指輪が光っている。
「俺とお揃い。
まあ、いずれは渡すつもりだったし。
今回のことで俺も色々考えることあったから。
……お前が少しでも不安にならねぇようにってのもあんだけど…、」
椿は照れくさそうに視線をそらした。
美羽の胸が一気に熱くなる。
涙がぽろぽろ落ちた。
「う……え……椿くん……ありがとう……!!
一生、絶対大事にするぅぅ……!!」
「はは、そんな泣くなよ。」
椿は照れながら笑い、
美羽の濡れた頬を親指でそっとぬぐった。
そして額にキスを落とし、抱きしめた。
美羽もそっと腕を回し、
「大好き……椿くん。」
椿は、胸の奥まで甘くなる声で返した。
「……俺も。」
空の彼方では、流れ星がひとつ尾を引いて消えていった。
ふたりの影はぴたりと寄り添い、
旅館のしずかな夜に溶けていった。
なぜか静かに 枕投げ が始まっていた。
ぽすっ…ぽすッ。
玲央が冷静な顔で枕を投げ、
遼がそれを華麗に避け、
碧は笑顔で受け止め、
悠真はなぜか全力で投げ返している。
「てかさぁ、椿遅くない?」
悠真が枕を抱えながら首をかしげる。
遼はベッドに寝転んだまま、ニヤリとした。
「さぁなぁ~。美羽ちゃんと、よろしくやってんじゃね?」
「は!?!?
僕の美羽ちゃんが椿に襲われてるってこと!??
ちょっと待ってそれは由々しき事態だぁ――!」
悠真が本気で飛び出していこうとしたその瞬間、
ぼふっ!!!
玲央の枕が悠真の顔面にクリーンヒット。
「落ち着け。問題はないと椿から連絡が来ている。
雨宮美羽は風呂でのぼせたらしい。」
「ええ!?のぼせちゃったの!?かわいそうにぃ~
美羽ちゃあああん!!」
悠真は泣きながら碧に枕を投げた。
碧は柔らかく笑って受け止め、
「長風呂はよくないですからね。
美羽さん、色々あったので疲れてたのでは?」
と優しい声で返しながら遼へ枕を投げた。
遼はそれをヘディングで受けながら言う。
「まぁ、のぼせるにも“いろんな意味”があるけどなぁ〜?」
「なんだよ!遼!!破廉恥だぞっ!
美羽ちゃんがそんなやらしい子なわけないだろ!!!」
「ははっ、冗談だっての~!」
「そんな遼には擽りの刑だ!!この!このぉ~!!」
「あはは!お、おい悠真、やめろよっ~!」
男子組は騒がしく枕をぶん投げ続け、
布団の上は羽毛がふわふわ舞い始めていた。
ところ、変わって女子部屋では。
莉子は布団にもぐりながら、
「もう、美羽ったら…椿くんといるみたいだしいいけどさ~。
皆~美羽、帰ってこないし……先にもう寝よ~?」
とクラスメイトたちに声をかけ、電気を消した。
部屋はすぐに寝息の海になった。
*そして、美羽と椿は…
誰もいない特別室のベランダ。
秋の夜風がそっと流れ、外から虫の声が聞こえる。
鼻血もすっかり止まり、美羽は夜空を見上げていた。
「わぁ……綺麗……」
星が、京都の空に吸い込まれるように瞬いている。
椿はその横顔をちらりと見て、くすっと笑った。
「美羽、もう大丈夫なのか?」
「う、うん……ありがと、椿くん。」
美羽はまだ頬が少し赤い。そのくせ目はきらきらしていた。
「――あっ!流れ星!」
美羽は慌てて手を合わせる。
椿は苦笑しながら言った。
「はは、早すぎて間に合わねぇだろ。
で?何願ったんだ。」
「い、言わないよ!言ったら叶わないでしょ!」
ぷいっとそっぽを向く美羽。
その仕草があまりに可愛くて、椿は喉の奥で笑った。
「美羽。」
「な、何、椿くん?教えないよ?」
ゆっくり美羽が振り向いた瞬間――
椿はひとつ深い息を吸った。
「少しだけ目、瞑れ。」
「えっ?な、なんで!?」
「いいから。」
言われるまま美羽はぎゅっと目を瞑る。
夜風の冷たさと、胸のどきどきだけが身体を巡った。
「……開けていいぞ。」
美羽はそっと瞼を上げた。
その刹那。
左手の薬指が、きらりと光った。
「え……っ……!?
つ、椿くんこれ……!!!?」
小さな銀の指輪。
星空の下で溶けるように輝いている。
椿は指先で自分の左手を見せた。
そこにも同じ指輪が光っている。
「俺とお揃い。
まあ、いずれは渡すつもりだったし。
今回のことで俺も色々考えることあったから。
……お前が少しでも不安にならねぇようにってのもあんだけど…、」
椿は照れくさそうに視線をそらした。
美羽の胸が一気に熱くなる。
涙がぽろぽろ落ちた。
「う……え……椿くん……ありがとう……!!
一生、絶対大事にするぅぅ……!!」
「はは、そんな泣くなよ。」
椿は照れながら笑い、
美羽の濡れた頬を親指でそっとぬぐった。
そして額にキスを落とし、抱きしめた。
美羽もそっと腕を回し、
「大好き……椿くん。」
椿は、胸の奥まで甘くなる声で返した。
「……俺も。」
空の彼方では、流れ星がひとつ尾を引いて消えていった。
ふたりの影はぴたりと寄り添い、
旅館のしずかな夜に溶けていった。



