危険すぎる恋に、落ちてしまいました。2

悠真は目をむいて腰を抜かした。

「うわあああああ!?椿が!浮気してるーーーー!?」

遼は手を顎に当ててニヤニヤした。

「これはなかなかの現行犯だな〜」

碧は楽しそうに笑った。

「椿くんのタイプ、守備範囲広いですね!」

玲央は眼鏡をクイッと押し上げながらパソコンを開く。

「新キャラか。情報が必要だな。」

莉子は、なぜかきゃあきゃあ言いながら叫んだ。

「え、めっちゃかわいいんですけどっ……!!」

――その時。

美羽のこめかみに、ビキッと怒りマークが浮かんだ。

(…………………………
……なにこれ、どういう状況?)

(だれ?
なんで椿くんに抱きついてるの?
しかも、なにその可愛さ。映画のヒロイン?
てか……元カノ??)

竹林の光が揺れ、胸のざわめきは止まらなかった。

椿は驚きながらも、抱きつかれている相手を少し引きはがし、

「お前、なんでここに……?」

女の子は、にっこり笑った。

「秋人から連絡きてさー!ボクの学校も修学旅行だから、会えるかなって思ってたんだけど!
まさか本当に会えるなんて!ボク嬉しい!!」

美羽は目を見開いた。
(ボ、ボク……!? ボクっ子!?
いやそこじゃなくて……問題はそこじゃなくて!!)

美羽が怒りをせき止めていたその時――

その子は、椿の腕にぎゅぅっとしがみついた。

「ふふっ、つ〜ば〜きっ!!」

そして――
そのまま椿のほっぺにちゅっとキスをした。

「もう椿〜!相変わらずカッコいいんだから!」

椿
「おい!真白っ!やめろ!!」

美羽は思わず頭が真っ白になった。

(………………………………)



プツン。

美羽の中で、音を立てて何かが切れた。

次の瞬間、美羽は真白の肩をわしっと掴んだ。

「ちょっとぉ!?あんたいい加減離れなさいよ!!」

真白は驚くどころか、ニヤッと笑った。

「え?この子だれ??
ちょー可愛いじゃん!!」

そのまま今度は美羽に抱きついてきた。

「きゃっ!?ちょ、ちょっと!?なんで私!?」

椿が慌てて引き剥がした。

「おい、真白。いい加減にしろ。」

椿は美羽に向き直り、

「美羽、とりあえずこいつは…碓氷真白(ウスイ マシロ)。俺の幼少期からの幼馴染だ。落ち着いて話を聞…」

そして椿の会話が入ってこず美羽は混乱していた。
(幼馴染……!?
ほんとに……??
いや、幼馴染こそ恋のライバルでしょ!?)

叫びかける気持ちをこらえながら、

「で、でも!!幼馴染だからってほっぺにキスはダメだよ!!」

椿は眉間に皺を寄せ、ため息を吐いた。

「美羽。俺はともかく、お前だって秋人の事があるだろ。人のこと言えねぇ――」

「何それ!?信じらんない!椿くんのバカーっ!!」

美羽は椿の言葉を遮り、踵を返して駆け出した。

竹林の奥へ――
涙がこぼれそうで、それでも必死に走った。

「おぃっ、美羽っ!!」

椿が叫ぶが、美羽の姿はもう竹の間に消えていた。

悠真は立ち上がりながら怒鳴った。

「あ〜!!美羽ちゃん怒っちゃったじゃん!!
さすがに今のは椿が悪い!!どーすんのさ!!」

莉子も真剣に怒っていた。

「そうよ!椿くんひどい!!
あんなの誤解するに決まってるじゃん!!」

椿はぼそりと言った。

「いや、真白は男だぞ?怒ることねーだろ。」

黒薔薇メンバーと莉子
「「「「お、男ぉお???!!」」」」

真白はピースしながら笑った。

「そーだよ?ボクは正真正銘、男の子でぇーす♪
えへ♪」

悠真は叫んだ。

「てか美羽ちゃん、完全に勘違いしてるじゃーーん!!」

椿は舌打ちして、髪をかきあげた。

「だから人の話最後まで聞けって言ってんのに。
ちっ……しゃーねぇ。」

そして、即座に走り出す。

「椿ー?なんかごめんねぇ〜!」と真白が手を振る。

莉子は怒りを真白へ向けた。

「いやいや軽すぎ!!完全に君が悪いからね!?!?」


「てへ☆ボクが可愛いからかな?ごめんねぇ~」


「いや、なんなのこの子!?」


空の雲はどんどん厚くなり、
どこか、雨を予感させるグレーを帯びていた。