夏の熱気がすっかり消え、風が少し冷たく感じる朝。
学校の正門には大きなキャリーケースとワクワクが充満していた。
「修学旅行だーっ!!」
莉子が朝からテンションMAX。
美羽も負けずにはしゃいでいた。
新幹線の自由席――
黒薔薇メンバーと美羽と莉子は同じ車両になり、なんだかんだで全員で一緒に座ることに。
「そうだ!ババ抜きしよーよ!」
悠真が突然トランプを取り出し、全員の同意を待つ前にシャッフルを始めた。
列は、美羽 → 莉子 → 遼 → 碧 → 玲央 → 悠真 → 椿 の順。
ゲームが始まり、美羽の手札に――
ひょっこりジョーカーが混ざった。
(……え、ちょっ……最悪……!!)
美羽の顔は一瞬で曇り、口元がピクピク。
その様子を椿が横目で見て、ニヤリとした。
「なんだ、美羽。いいカードでも引いたのか?」
「え!?い、いや……全然……!」
(嘘!絶対バレてるよね!?なんでわかるの!?てか、椿くんが私のカード引くとかもう、負け確定じゃん!!)
椿はわざとゆ〜っくり美羽のカードに手を伸ばし、
指先でカードをゆらゆら揺らす。
「どれだ〜……これか?」
「あっ!ちょっとぉっ……!」
見事にジョーカーを当てられ、
美羽の心は秒で崩壊した。
結果――
美羽、圧倒的敗北。
「もう!椿くん!!心読まないでよ〜〜!!」
「読んでねぇ。すぐ顔に出るお前が悪い。」
椿が肩を揺らして笑う。
その笑顔に、負けた悔しさも少し和らいでしまうからずるい。



