夕暮れ。
美羽の部屋には、まだ椿の残り香がふわりと漂っていた。
椿は「また連絡する」と言い、家の玄関へ向かっていたが
その背中には、静かに燃える怒りが宿っていた。
*椿side
玄関のドアを閉めた瞬間、椿は低く息を吐いた。
「……神楽怜。」
名前を言うだけで、
胸の奥がひどく冷える。
(美羽に触れた……噛みついただと……?
あいつ、生きて帰れると思うなよ。)
拳を握ると、骨がきしむ音がした。
その時、スマホが震える。
玲央からのメッセージだった。
『生徒会室に緊急集合。銀狼の新たな情報が入った。』
椿は短く返して歩き出す。
美羽の家から黒薔薇の空気に戻る顔が、
完全に“王の顔"に変わっていた。
*生徒会室ーー。
ドアを開けると、黒薔薇のメンバーが全員揃っていた。
玲央がノートPCを前に座り、
悠真は真剣な顔で腕を組み、
碧は険しい表情で資料を見ている。
遼は窓にもたれ、珍しくシリアスだった。
椿が来ると、全員の視線が向いた。
「椿くんっ!!」
莉子が心配そうに立ち上がる。
椿は短く言った。
「……美羽は無事だ。」
その一言で、空気が少しだけ緩む。
しかし椿の次の言葉で、凍りついた。
「だが。
銀狼の頭、“神楽怜”が美羽に接触していた。
……首に傷をつけられてな。」
「っ……!!」
悠真の表情が怒りで歪む。
「嘘…美羽が………」
莉子も震えた声を漏らす。
玲央は一度息を吸い、冷静に言う。
「やはり。
この定期券を送りつけたのは、挑発で間違いないですね。」
遼が眉をひそめる。
「椿、暴れんなよ?もう目が血走ってんぞ。」
椿は低く言った。
「……殺しはしねぇよ。
だが、銀狼がうちの女に手を出したんだ——」
目が鋭く光る。
「黒薔薇は絶対に黙ってねぇ。」
生徒会室に、しんとした緊張が走った。
碧が椿に資料を渡す。
「神楽怜は銀狼のトップ。
喧嘩の強さは椿くんと互角、
いや……“一度も本気を見せたことがない”と言われてます。あと、秋人さんの怪我の仇でもありますよね。」
悠真が椿を見つめる。
「会長……絶対に1人で突っ走っちゃダメだからね。」
椿は眉ひとつ動かさず言った。
「あぁ、突っ走るつもりはねぇ。
美羽を守るために、“黒薔薇”全員で動く。秋人のかりもあるからな。」
その一言は、
王としての宣言だった。
*その頃、美羽side
布団の上で、スマホを握りしめたまま美羽はうずくまっていた。
(椿くん……
怒ってたわけじゃないよね……?
私が泣いたら……ちゃんと抱きしめてくれたし……)
でも胸の奥に、不安が残っていた。
怜の言葉。
黒薔薇を半殺しにする、と。
(……もし、椿くんが怜と戦ったら……)
想像だけで息が詰まる。
「どうして……
どうして私なんかが巻き込まれちゃうの……」
涙がにじむ。
その時、スマホが震えた。
椿からの新着メッセージ。
『今日はゆっくり休め。
明日、迎えにいく。』
美羽の胸がぎゅっと締めつけられた。
指を震わせながら、返事を打つ。
『うん……ありがとう。椿くん。』
送信してから、
美羽は布団の中で胸元を押さえた。
(椿くんと一緒にいるだけで……
怖さが消えるのに……)
目を閉じると、
椿の言葉が蘇る。
『俺は何があっても、お前が好きだ。
それは変わらない。』
涙が、頬を静かに伝った。
(椿くん……)
夜の闇の中、
美羽の胸は不安と愛しさで締めつけられていた。
美羽の部屋には、まだ椿の残り香がふわりと漂っていた。
椿は「また連絡する」と言い、家の玄関へ向かっていたが
その背中には、静かに燃える怒りが宿っていた。
*椿side
玄関のドアを閉めた瞬間、椿は低く息を吐いた。
「……神楽怜。」
名前を言うだけで、
胸の奥がひどく冷える。
(美羽に触れた……噛みついただと……?
あいつ、生きて帰れると思うなよ。)
拳を握ると、骨がきしむ音がした。
その時、スマホが震える。
玲央からのメッセージだった。
『生徒会室に緊急集合。銀狼の新たな情報が入った。』
椿は短く返して歩き出す。
美羽の家から黒薔薇の空気に戻る顔が、
完全に“王の顔"に変わっていた。
*生徒会室ーー。
ドアを開けると、黒薔薇のメンバーが全員揃っていた。
玲央がノートPCを前に座り、
悠真は真剣な顔で腕を組み、
碧は険しい表情で資料を見ている。
遼は窓にもたれ、珍しくシリアスだった。
椿が来ると、全員の視線が向いた。
「椿くんっ!!」
莉子が心配そうに立ち上がる。
椿は短く言った。
「……美羽は無事だ。」
その一言で、空気が少しだけ緩む。
しかし椿の次の言葉で、凍りついた。
「だが。
銀狼の頭、“神楽怜”が美羽に接触していた。
……首に傷をつけられてな。」
「っ……!!」
悠真の表情が怒りで歪む。
「嘘…美羽が………」
莉子も震えた声を漏らす。
玲央は一度息を吸い、冷静に言う。
「やはり。
この定期券を送りつけたのは、挑発で間違いないですね。」
遼が眉をひそめる。
「椿、暴れんなよ?もう目が血走ってんぞ。」
椿は低く言った。
「……殺しはしねぇよ。
だが、銀狼がうちの女に手を出したんだ——」
目が鋭く光る。
「黒薔薇は絶対に黙ってねぇ。」
生徒会室に、しんとした緊張が走った。
碧が椿に資料を渡す。
「神楽怜は銀狼のトップ。
喧嘩の強さは椿くんと互角、
いや……“一度も本気を見せたことがない”と言われてます。あと、秋人さんの怪我の仇でもありますよね。」
悠真が椿を見つめる。
「会長……絶対に1人で突っ走っちゃダメだからね。」
椿は眉ひとつ動かさず言った。
「あぁ、突っ走るつもりはねぇ。
美羽を守るために、“黒薔薇”全員で動く。秋人のかりもあるからな。」
その一言は、
王としての宣言だった。
*その頃、美羽side
布団の上で、スマホを握りしめたまま美羽はうずくまっていた。
(椿くん……
怒ってたわけじゃないよね……?
私が泣いたら……ちゃんと抱きしめてくれたし……)
でも胸の奥に、不安が残っていた。
怜の言葉。
黒薔薇を半殺しにする、と。
(……もし、椿くんが怜と戦ったら……)
想像だけで息が詰まる。
「どうして……
どうして私なんかが巻き込まれちゃうの……」
涙がにじむ。
その時、スマホが震えた。
椿からの新着メッセージ。
『今日はゆっくり休め。
明日、迎えにいく。』
美羽の胸がぎゅっと締めつけられた。
指を震わせながら、返事を打つ。
『うん……ありがとう。椿くん。』
送信してから、
美羽は布団の中で胸元を押さえた。
(椿くんと一緒にいるだけで……
怖さが消えるのに……)
目を閉じると、
椿の言葉が蘇る。
『俺は何があっても、お前が好きだ。
それは変わらない。』
涙が、頬を静かに伝った。
(椿くん……)
夜の闇の中、
美羽の胸は不安と愛しさで締めつけられていた。



