一葉は頭がおかしくなってしまったんだろう。
だってそうじゃなければ俺の恋人に立候補するなんてありえない。
飲み過ぎ?
二日酔いだったのかも。
それで変なことを口走った、と。

…いや、一葉が酔ったところなんて見たことない。
多少酔ってもいつもしっかりしてて俺が介抱してもらうんだから、二日酔いだからってわけのわからないことを言うわけがない。

じゃあなに…?

「……わからない」

パソコンのキーを打ち続ける。
また間違えた。
今日はいつも以上にバックスペースキーと仲良しだ。

わからない…考えても考えてもわからない…。

こういうときは。

『俺の恋人になってどうするの?』

直接聞く。
メッセージを送信。

『俺、だめなところしかないよ。楽しくないよ』

送信。

『一葉にはもっといい人いるよ。俺なんかだめだよ』

送信。

『幼馴染でいたくないの? なんで恋人なの? 俺なんかを恋人にしたら一葉が恥ずかしいよ』

送信。

「……」

すぐ既読になるのに返信はこない。

『俺のどこがいいの?』

更にメッセージを送ろうとしたらスマホが震えた。
一葉から着信。

「はい」
『深來さ、すぐメッセージ連投してくんのやめろ。まだ混乱してんのか』
「…俺のこと、よくわかってるね」
『当たり前だろ』

幼馴染だもんな。

『深來が好きなんだから』
「!?」

幼馴染だからじゃないの!?

「す、好きとかそんなにはっきり言うなよ…」

顔が熱くなってきて、なんとなく小声になってしまう。
でも一葉は更に声を大きくする。

『言わなきゃ伝わらないやつには言い続けるに決まってんだろ』
「そ、そういうもの?」
『言っても伝わってねえみたいだから、今夜も深來んとこ行く』
「えっ!?」
『俺の気持ち、わからせてやる』

プツッと通話が一方的に切れる。
手がぷるぷるする。
『わからせてやる』ってなに?
俺、なにされるの!?