ザクロはザクロで、興味深そうに景の表情をうかがっている。景の胸はざわつき、ザクロの言葉を整理したくて鬼との出会いを思い出していた。
最初……鬼は、襲われた景の前に飛燕のような素早さで唐突に現れ、彼女を救ってくれた。偶然その場に居合わせただけとは思えない迷いのなさが、彼の刀にはあった。
つまり、鬼はあの時点で、すでに景が狙われていると知っていて……。
それは、鬼がこのザクロと関係があるからで……。
このザクロは、彼女の言によれば『殺し屋稼業』で……。
おきくから依頼を受けて……。
「あ……」
景は両手で口元を覆い、嗚咽を抑えようとした。
鬼。
景を守ってくれた鬼。
景の心を奪っていった鬼。
冷徹に見えた瞳の奥には、熱くて優しい心が宿っているのだと信じて疑わなかった。生まれて初めて惹かれた男性。
でも、彼は本当は……景を殺すことが目的で近づいてきた……。
「泣くでないよ、景姫。鬼が本当にあんたを殺す気だったなら、とっくに殺ってるさ。でもあんたは生きてる。これはすごいことなんだよ」
ザクロは再び煙管に手を伸ばし、スゥッと長い一服をした。
吐き出された煙が目に染みて、景の目にはさらに涙が浮かんだ。なにをどう受け止め、どんなふうに感じるべきなのかわからなかった。五体のすべてが麻痺してしまったような気がする。
わかるのはただ、胸が張り裂けそうに痛いことだけ。
「でも、もう一歩、あの男にはお灸を据えてやらないと、なにも認めないと思うんだよ。悪いけど、ちょっと協力してもらうよ」
え、と景が声を上げようとすると、閉まっていた襖が突然に開いて、ひとりの男が姿を表した。
「はい、はい、はい……と」
その男は、濃い茶色の髪を肩まで無造作に流し、洒落た灰色の着物を着ている。彼は、腰に刀を携帯したまま座敷の中に入ってきた。
そして目を細めながらじろじろと景を観察する。
どこか南蛮を思わせる明るい肌色と、彫りの深い目が目立つが、最も印象的なのは彼のその目つきだった。……普通の男ではない。
「さあ、剣。言っておいた通りにやっておくれ」
ザクロはまるで楽しんでいるような口調でそう言い放った。
「わかりましたよ、ザクロ。あなたの頼みとあれば、どんなことでも」
剣と呼ばれた男は答えた。
剣の手になにかが握られているのが見え、景は思わず悲鳴を上げた。

