鬼景色



 次に景が目を覚ました時、最初に意識を刺激したのはツンと香る煙管(キセル)のけむりだった。

 景の周りで煙管を嗜むのはおきくだけだったが、彼女が愛煙している甘ったるい香りのけむりとは違う……もっと辛味を感じるような、鋭い芳香が鼻をつく。
 どちらにしても心地よいものではなく、景は眉をしかめながらゆっくりと目を開いた。

「おや、思ったよりも早く目を覚ましたね。わたしの見込み通り、なかなか芯の強い娘だよ」
 知らない女の声がして、景は驚いてそちらへ顔を向けた。

 景はさる座敷の、布団の上に無造作に寝かされていた。そして、そのすぐ横に、鮮血のような赤色の花が華やかに広がる着物を着崩した、面長の女が座っていた。
 煙管はその女がくゆらせていた。

「あたしの名前はザクロ」

 聞かれたわけでもないのに、女は名乗った。呆気にとられている景に向かって、にんまりと微笑む女は、よく見ると相当に美しい顔立ちをしていた。控えめに白粉(おしろい)をはたいた肌は抜けるような白で、艶やかな黒髪を金のかんざしで上品に頭上にまとめている。

 同じ女として、どうしても胸がざわつかずにはいられないような、圧倒的な存在感を持った女だった。

「そうさねぇ……。なにから説明してあげようか」
 ザクロと名乗った女は、のんびりとした仕草で煙管を畳の上の盆に置いた。