雨が降っている。灰色の雲が、まるで泣いているように水滴を地面に落とし、おぉ、おぉ、わたしの悲しみを聞いてくれと嘆いているようでさえあった。
それともそれは景の心を写して、その心情をおもんぱかった鬼が、そう感じるだけなのだろうか。
それとも、鬼自身の心を……?
ありえないと、鬼は繰り返し打ち消した。
鬼の心はとうの昔に消え去った。その証拠に、いくら人を切り捨てても、いくら自らの手を血で濡らしても、なにも感じなくなった。
それを、たかが一人の小娘と三日間過ごしただけで変化するなど、ありえない。
どちらかといえば雨に濡れてしまいたいような気分ではあったが、なぜか景の好意を無為にはしがたく、鬼は傘をさして歩き出した。しかしすぐに背後に景の視線を感じて、肩越しに振り返る。
景はじっと鬼を見つめていた。
「入るか」
鬼は玄関口にたたずむ景に傘を差し出した。
驚いて目を見開く景の顔を、鬼は妙な痛みと甘さの混じった気持ちで見下ろした。景は鬼を想っている。たとえそれが、外の世界へ滅多に出られない鳥籠の中の少女の、無垢で無知な若い感情であっても。

