──雨の夜というのは厄介だった。
警備の足が重くなり、人々は家屋敷に引きこもり、雨音が侵入者の足音を消し流してしまう。そう、雨の夜ほど刺客が歓迎するものはなく、鬼自身がその利点を誰よりもよく理解していた。
最初の夜以降、剣の襲来はまだなかった。
ただ、殺気は感じなかったが、密かに誰かに見張られているような、ぴんと張った緊張感を時々背筋に感じた。もしかしたら剣か、ザクロが放った別の忍びが様子見をしているのかもしれない。
もしくは……ザクロに景の殺しを依頼したどこぞの馬鹿者か、が。
鬼は灰色の空を鋭く睨みながら、縁側に片膝を立てた格好で座っていた。
手元はつねに刀の鞘を確認しており、視線の端はつねに部屋の中の景を意識していた。今日の彼女はまた、静かに竹籠を作っている。造りからして、鳥籠なのではないかと鬼は思った。
自らが囚われている鳥籠を、手元に再現しようとしているようで、どこか物悲しくさえあった。
景の細い指は器用で、慎重で、竹のしなりを上手くいなしながら美しい籠を仕上げていく。鬼も、忘れ去ったほど遠い過去の話とはいえ、家具職人の子である。景の腕のほどと、手仕事に対する愛情はすぐに分かった。
「雨になりそうですね。風が強くなってきました」
ふと顔を上げた景が、雨雲を仰ぎながら呟くように言った。
「ああ」
と、短い返事を鬼が返すと、景は雲から視線を移して鬼をじっと見据えた。

