掴まれた腕が、鬼の視線が、熱い。景の身体の芯が、それこそ鋭利なものに切られたように、じんじんと疼いた。熱い。痛い。息苦しい。
でも、このまま時が止まったらいいとも、思う。
景の唇から憂鬱なため息が漏れたのと同時に、鬼は傷ついた景の指先を口元へ運び、滲み出た血を吸った。
「あ……!」
その時本当に、景の望み通りに、時が止まったような気がした。
ほんの数秒の吸引。口づけでさえない、原始的な治療の行為。それでも、鬼の冷たい唇が景の指先に触れ、彼女の生命の滴りを吸うのだ。これを官能と呼ばないのなら、景はもう、その意味を永遠に知らなくてもいいと思った。
「は……っ、ぁ」
しばらくの間、景は無意識に息を止めていたようで、鬼の唇が指から離れると同時に、切ないため息が再び漏れた。
そして鬼は、必要以上に長くの時間を、景の指先を見つめるのに費やしていた。
すこししてから、
「ここに塗り薬がある」
と、鬼はつぶやき、帯の中に片手を滑り込ませた。出てきたのは、親指の先ほどの小さな漆喰の入れ物で、中にはどこか血の色に似た細かい朱色の粉が入っていた。
それを怪我した指にあてがおうとする鬼に、景は慌てて首を振った。
「鬼殿、いけません。きっと高価なものでしょう。わたしなどに使っては……」
「俺には無用の長物だ。ほかに使ってやりたい相手もいない」
「でも……」

