長かった眠れない夜が明けて、やがて朝が来るころになるとやっと、景も浅い眠りに入ることができた。
ふたたび目を覚ますと、太陽はもうだいぶ昇っているようで、東日の当たらない景の部屋もずいぶん明るくなり始めていた。景は何度かまばたきをして、ゆっくりと身を起こして襖の隙から漏れる光に目を向けた。
短い睡眠の間ずっと、うららかに、夢から夢を渡り歩いていた気がする。
現実との境がはっきりしない、曖昧で短い夢をほんの少しだけ覗くように見た。しかしどの夢にも、闇のような瞳をした長身の武士がひとり、景のことをじっと見ていた。
時には身の凍るような冷たい瞳で。
時には近づくだけで火傷をしてしまいそうな熱い瞳で。
その気性はどうあれ、いつでも、いつまでも、彼はじっと景のことを見つめている。
そんな夢を。
(あれは……)
いつのまにか、景は首元に手を当てていた。
よかった、もう痛くはない。それでもわずかにチクリと夏虫に肌を刺されたような感覚が鬼に刀を突きつけられた場所に残っていて、景は昨夜、なにが現実で、なにが夢だったのかをしっかりと思い出した。
(あれはなんだったのかしら……)
景は立ち上がり、朝の身支度を始めながら考えた。
世話をしてくれるはずの下女も、いるにはいる。しかし屋敷の外れのこの場所にいつも顔を出してくれる訳ではなく、わざわざ呼びに行かなければいけないことが多くて、景はいつのまにか自分で自分の世話をするようになっていた。さすがに飯炊きまで自分ですることはなかったが、景はたいていのことはひとりでこなした。
着物を着て髪を結うと、景は部屋の襖を明けて外を見た。

