景は外に繋がる襖を見つめながら、この思慕を心の中に抱くことをお許しください、と誰にも聞こえない声で呟いていた。
どんな理由で誰が景の命を狙っているのだとしても、それがどれだけ恐ろしい手立てになるとしても、景は今、ここに鬼がいてくれる運命の巡り会わせに、心から感謝したい気持ちだった。
景は夜中に鳴く虫の音を聞くのが好きだ。
屋敷の奥に追い込まれて、嬉しかったことがひとつだけある。それは季節が夏に近づくと、毎晩美しい虫や梟の鳴き声が終わらない旋律のように景を慰めてくれることだった。
眠れない夜、景ははいつも目を閉じながらじっと耳を澄まして、その音に聞き入った。
今夜は鬼も同じ音を聞いているのかと思うと、景の心臓は少しはやる。
だから、外の音が微妙に変化していたのに、景はすぐには気が付かなかった。そもそもその変化もわずかなもので、気にするほどのものでもなかったはずだ。
しかしなぜか、景は言いようのない緊張に包まれた気がした。
そして急に静かになった野外から、鋭い金属音が甲高く響くのが聞こえて、景は身を固くした。
(な、なに……?)
その金属音には聞き覚えがあった──昨日聞いた、鬼が暴漢と戦ったときの刀と刀が激しくぶつかり合う音がまさにそれだ。
(まさか)
景の心臓は痛いほど高鳴り、息が苦しいほどになった。
まさかまた暴漢が……。
暴漢がここを発見して襲いかかってきたというの?

