キンと甲高い金属音が響いて、剣は鬼の刀を横手に受けていたが、その衝撃にわずかに姿勢を崩していた。鬼は剣が姿勢を立て直す隙を与えず、次の一撃を脇腹めがけて放った。
鬼の太刀筋は滑るようによどみなく、一見、剣の激しい刀の振るい方と並ぶと、まるで力が込められていないようにさえ見える。それこそが鬼の技だった。
人間のものとは思えないほどの技。
心を一切受け入れない神技。
剣は素早く身を引いたが、鬼の刀は剣の脇腹を下から斜めに薄く切っていた。剣の着物が破れ、固いはずの帯までが割れるように切れて、はらりと肌がはだける。その肌には一本の細い筋が走り、紅い血がわずかににじみでていた。
息ひとつ乱さずに、一歩引いたところで下段に構えている鬼を、剣は険しい瞳でにらみながら構えなおした。
しかしもう勝敗はついている。
「あれは俺が殺る」
鬼はもう一度言った。
誰が、誰に向かって言っていたのだろう──鬼は剣に宣言すると同時に、彼自身にも言い聞かせていたのかもしれない。いつ、どんなふうに、どんな形になるにせよ、それが鬼と景に課された運命なのだと。
剣は肩で息をしていた。
刀を抜いた鬼にこれだけ近づけただけで、剣は十分に優れた剣士であるのだ。しかも今の鬼の殺気は尋常ではなかった。
「……ザクロには俺から伝えよう」
そう言い残すと、剣は素早く闇の中に消えていった。
それがなにを意味するのか、鬼にはよく分かっていた。

