「父の申し出を引き受けてくださって、ありがとうございました」
夕日を見ながら呟いた景は、なんどか眩しそうに瞳をまたたいていた。
鬼はまたなにも答えずにうなづくだけうなづいた。
景は続ける。
「あと数日なにもなければ、きっと父もあなたのお役を解くと思います。もともとそれほど外には出られませんから、大丈夫でしょう」
しばらくふたりは静かに夕映えの雲を眺めていた。
白が陰りをおび、紫だった影が闇に溶け込むように消えていく。斜陽。今まさに沈もうとしている太陽。
凛とした景の瞳は落日によく映えた。
たしかに景の父は鬼に彼女の警護を頼んだ。そして鬼はそれを受け入れた。しかし、それが気休めであることは誰の目にも明らかだ。この先、本当に景が殺められた場合、少なくとも警護の者を付けていたのだと──景を守ろうと努力はしたのだと──世間に訴えるためだけの。
そして、景はそれを静かに受け入れたのだ。
理由は分からない。あるいは、暴漢が玄人だという話を信じていないのかもしれないが。

