「警備、そうか」
やっと父の口調に生気が戻ってきた。
「鬼殿と仰ったか。貴殿は武士であられるか」
「下士ではあるが、左様」
「ここ数年、この藩に戦争はない。仕事にあぶれている浪人も多いと聞く」
「お父さま!」
妙なほうに話が進みはじめ、焦った景は声を上げた。
鬼には礼金を渡して礼を言えばそれで終わりだったはずだ。そのために鬼はここまで付いてきてくれたのではないか。これ以上、彼を巻き込むべきではない。
しかし父は続けた。
「黙りなさい、景。鬼殿、賃金は言い値を出そう。ほとぼりが冷めるまで、景の警護をして頂けないだろうか」
景は唖然として息を呑んだ。
おきくは顔を強ばらせ、言葉を失っていた。
鬼は──鬼は、やはり能面のように冷たく父を見据えたままでいた。

