陽羽は「〝龍帝の命を狙った〟というなら、朱華も同じでしょう」と叫んだというが、高天帝はそれをはっきりと退けた。
そして「そなた自身が脅したという反省もなく我が妃をそれ以上愚弄するなら、死罪、もしくは生涯に亘る重労働を申しつけるがよいか」と苛烈な瞳で告げられ、ぐうの音も出ずに黙り込んだという。
あれから朱華を取り巻く環境は一変し、まずは住まいを翠霞宮から高天帝と同じ皇極殿に移された。
正式な立后は三ヵ月後を予定しており、縫殿寮が婚礼で着るための豪華絢爛な装束や普段使いの衣裳を大至急で用意する一方、龍帝の妃としてふさわしい教養や立ち居振る舞いなどを古参の女官から教わる日々を送っている。
華綾の采女は制度自体が廃止されるのが正式決定したが、それは尚侍の萩音が起こした事件の影響が大きい。
高天帝は彼女が嫉妬心から朱華を襲った事件を非常に憂慮しており、自身に他の妃を娶る気がないことから、妃候補である采女は必要ないと判断したそうだ。
皇宮に出仕していた一〇〇名近くの采女は解雇されることとなり、彼女たちの親である官僚や大富豪には落胆が広がったという。
とはいえ、今まで嫌がらせをしていた朱華が龍帝の妃となる事実に気まずさをおぼえている者は多かったようで、華綾の采女の肩書は縁談に有利だという見方もあるといい、実家に戻ることに前向きな者が多いらしい。
風花と美月は朱華が翠霞宮を出るときに物言いたげな顔をしてこちらを見ていたものの、朱華は彼女たちとは話をせずに背を向けた。
内儀の祢音いわく、朱華に憎しみを募らせた萩音は采女たちを巧妙に煽動して嫌がらせをさせていて、風花は真っ先に彼女に操られた人間だったそうだ。
風花にしてみれば、仲よくしてあげていた新顔の朱華が抜け駆けをして龍帝に取り入ったと感じたらしく、追従した美月も含めて彼女たちなりの言い分があるのだろう。
だが二人の態度の変化に朱華が傷ついたのは事実で、「気にしないで」とは言えなかった。
(ずっと友人でいたかったけど、仕方がない。彼女たちも実家に戻るんだし、きっと今後会うことはないんだろうな)
そして「そなた自身が脅したという反省もなく我が妃をそれ以上愚弄するなら、死罪、もしくは生涯に亘る重労働を申しつけるがよいか」と苛烈な瞳で告げられ、ぐうの音も出ずに黙り込んだという。
あれから朱華を取り巻く環境は一変し、まずは住まいを翠霞宮から高天帝と同じ皇極殿に移された。
正式な立后は三ヵ月後を予定しており、縫殿寮が婚礼で着るための豪華絢爛な装束や普段使いの衣裳を大至急で用意する一方、龍帝の妃としてふさわしい教養や立ち居振る舞いなどを古参の女官から教わる日々を送っている。
華綾の采女は制度自体が廃止されるのが正式決定したが、それは尚侍の萩音が起こした事件の影響が大きい。
高天帝は彼女が嫉妬心から朱華を襲った事件を非常に憂慮しており、自身に他の妃を娶る気がないことから、妃候補である采女は必要ないと判断したそうだ。
皇宮に出仕していた一〇〇名近くの采女は解雇されることとなり、彼女たちの親である官僚や大富豪には落胆が広がったという。
とはいえ、今まで嫌がらせをしていた朱華が龍帝の妃となる事実に気まずさをおぼえている者は多かったようで、華綾の采女の肩書は縁談に有利だという見方もあるといい、実家に戻ることに前向きな者が多いらしい。
風花と美月は朱華が翠霞宮を出るときに物言いたげな顔をしてこちらを見ていたものの、朱華は彼女たちとは話をせずに背を向けた。
内儀の祢音いわく、朱華に憎しみを募らせた萩音は采女たちを巧妙に煽動して嫌がらせをさせていて、風花は真っ先に彼女に操られた人間だったそうだ。
風花にしてみれば、仲よくしてあげていた新顔の朱華が抜け駆けをして龍帝に取り入ったと感じたらしく、追従した美月も含めて彼女たちなりの言い分があるのだろう。
だが二人の態度の変化に朱華が傷ついたのは事実で、「気にしないで」とは言えなかった。
(ずっと友人でいたかったけど、仕方がない。彼女たちも実家に戻るんだし、きっと今後会うことはないんだろうな)
