朱華の眼差しには曇りがなく、その表情からは純粋にこちらを心配していることが伝わってくる。
しばらくそれを見つめた高天帝は、チラリと微笑んで答えた。
「そうか。ならばそなたの話を聞くとしようかな」
「ありがとうございます」
目を輝かせ、パッと笑顔になった彼女はとても可愛らしく、高天帝は内心「ほう」と思う。
早速朱華が「龍帝陛下は、首都・千早台を歩かれたことはございますか」と問いかけてきて、その質問に答えた。
「いや。いつも馬車に乗って通るだけで、降りて歩いたことはない」
「皇宮の門から外に出ると、南北に通る大路がございます。その両側はそれぞれ東市、西市という市場になっており、それぞれ二〇〇を超える店が軒を連ねているのです」
市場には肉や魚、穀物、乾物や酒といった食料品を扱う店はもちろん、絹織物や麻布、仕立て上がった衣服や沓を売る店、陶器や刃物といったものから書画道具を扱う専門店など、さまざまな店舗があるという。
「さらに宝石を扱う店やそれを加工する金銀細工店、茶葉や茶道具を扱う店や実際に飲める茶房、笛や琴などの楽器を扱う店まであり、とても活気があります。華陽国や天景国から持ち込まれた珍しい織物やお茶を扱っている店もあって、そちらも大変人気です」
彼女の説明を聞くうち、にぎやかな大路の光景が自然と目に浮かんで、気がつけば高天帝はすっかり聞き入っていた。
為政者として首都の規模やどんな構造をしているかは知っていても、実際に歩いたことも市場を視察したこともない。
そんなふうに考えながら、高天帝は感心してつぶやいた。
「興味深いな。そなたの話からは、大路を行き交う人々の様子や匂いまで生き生きと感じられる。私が出掛ける際は沿道に人々が並び、馬車を見送っているだけだから、普段の雰囲気とは違うだろうし」
「はい」
そう言って高天帝は、改めて朱華を見つめて告げる。
「面白かった。さすがに政務の都合で毎日というわけにはいくまいが、時間があるときに声をかけるゆえ、私に市井の話を聞かせてくれるか」
「はい、喜んで」
「では朱華、また近いうちに」
しばらくそれを見つめた高天帝は、チラリと微笑んで答えた。
「そうか。ならばそなたの話を聞くとしようかな」
「ありがとうございます」
目を輝かせ、パッと笑顔になった彼女はとても可愛らしく、高天帝は内心「ほう」と思う。
早速朱華が「龍帝陛下は、首都・千早台を歩かれたことはございますか」と問いかけてきて、その質問に答えた。
「いや。いつも馬車に乗って通るだけで、降りて歩いたことはない」
「皇宮の門から外に出ると、南北に通る大路がございます。その両側はそれぞれ東市、西市という市場になっており、それぞれ二〇〇を超える店が軒を連ねているのです」
市場には肉や魚、穀物、乾物や酒といった食料品を扱う店はもちろん、絹織物や麻布、仕立て上がった衣服や沓を売る店、陶器や刃物といったものから書画道具を扱う専門店など、さまざまな店舗があるという。
「さらに宝石を扱う店やそれを加工する金銀細工店、茶葉や茶道具を扱う店や実際に飲める茶房、笛や琴などの楽器を扱う店まであり、とても活気があります。華陽国や天景国から持ち込まれた珍しい織物やお茶を扱っている店もあって、そちらも大変人気です」
彼女の説明を聞くうち、にぎやかな大路の光景が自然と目に浮かんで、気がつけば高天帝はすっかり聞き入っていた。
為政者として首都の規模やどんな構造をしているかは知っていても、実際に歩いたことも市場を視察したこともない。
そんなふうに考えながら、高天帝は感心してつぶやいた。
「興味深いな。そなたの話からは、大路を行き交う人々の様子や匂いまで生き生きと感じられる。私が出掛ける際は沿道に人々が並び、馬車を見送っているだけだから、普段の雰囲気とは違うだろうし」
「はい」
そう言って高天帝は、改めて朱華を見つめて告げる。
「面白かった。さすがに政務の都合で毎日というわけにはいくまいが、時間があるときに声をかけるゆえ、私に市井の話を聞かせてくれるか」
「はい、喜んで」
「では朱華、また近いうちに」
