その夜、桔梗と枕を並べて床に入った朱華は、神経が高ぶっていつまでも眠れずにいた。
まんじりともせずに夜が明け、彼女と共に風峯の屋敷を訪れたところ、まだ皇宮に出勤していなかった彼が応接間で鷹揚な口調で言う。
「本来ならこちらから出向かねばならないのに、母御が自らこの屋敷に来てくれるとは。体調を崩されているとのことだが、お加減はいかがかな」
「ありがとうございます。決してよいとは言えない状況ですが、娘の件でお話をお伺いしたく、参上いたしました」
「朱華どのが当家で働き始めてひと月、その真面目さを関心して眺めておりましてな。何より楚々として品のある顔立ちが目を引き、龍帝陛下の元に出仕してはどうかと考えたのです」
風峯がにこやかに朱華の容姿を褒めそやし、桔梗に向かって告げる。
「私の養女となれば、華綾の采女として出仕するのは容易かろう。朱華どのには龍帝陛下にお仕えするにふさわしい教養を身に着けるべく半年ほどこの屋敷に逗留していただくが、一人になる母御には別に家を用意し、手厚く遇すると約束する。どうか心配しないでいただきたい」
これから親族になるのだからそれくらい当然だという彼の言葉に、母は戸惑いつつも安心したらしい。
ホッと表情を緩めた彼女は居住まいを正し、目の前の坐具に座る風峯に深く頭を下げた。
「風峯さまと直接お話する機会をいただき、大いに安堵いたしました。この子は夫亡きあとわたくしに残された、ただ一人の娘です。手元から離すことには寂しさもございますが、どうか朱華をよろしくお願いいたします」
まんじりともせずに夜が明け、彼女と共に風峯の屋敷を訪れたところ、まだ皇宮に出勤していなかった彼が応接間で鷹揚な口調で言う。
「本来ならこちらから出向かねばならないのに、母御が自らこの屋敷に来てくれるとは。体調を崩されているとのことだが、お加減はいかがかな」
「ありがとうございます。決してよいとは言えない状況ですが、娘の件でお話をお伺いしたく、参上いたしました」
「朱華どのが当家で働き始めてひと月、その真面目さを関心して眺めておりましてな。何より楚々として品のある顔立ちが目を引き、龍帝陛下の元に出仕してはどうかと考えたのです」
風峯がにこやかに朱華の容姿を褒めそやし、桔梗に向かって告げる。
「私の養女となれば、華綾の采女として出仕するのは容易かろう。朱華どのには龍帝陛下にお仕えするにふさわしい教養を身に着けるべく半年ほどこの屋敷に逗留していただくが、一人になる母御には別に家を用意し、手厚く遇すると約束する。どうか心配しないでいただきたい」
これから親族になるのだからそれくらい当然だという彼の言葉に、母は戸惑いつつも安心したらしい。
ホッと表情を緩めた彼女は居住まいを正し、目の前の坐具に座る風峯に深く頭を下げた。
「風峯さまと直接お話する機会をいただき、大いに安堵いたしました。この子は夫亡きあとわたくしに残された、ただ一人の娘です。手元から離すことには寂しさもございますが、どうか朱華をよろしくお願いいたします」
