重い腰を上げ、重い足を動かし、重い空気を振り払う。何もかもが重い。行きたくない。声を掛けたくない。それでも、この結果を伝えない訳にはいかない。娘の友達でしかない高校生の挑発を受けてくれた、華那の父親との約束を反故にすることはできない。
暗闇に沈む公園の中かから追い掛けるように、通り過ぎようとする背中に声を掛けた。
「こんばんは、少しだけいいですか?」
不意に背後から声を掛けられ、華那の父親の肩が跳ねる。それはそうだろう。もし自分が逆の立場だったら、大声で叫んでいるところだ。華那の父親は声の主がオレだと分かると、身体ごと振り返った。
「キミは・・・」
「少し前にお伺いした真鍋です。少しだけ時間、いいですか?」
華那の父親は小さく頷くと、一緒に街灯に照らされたベンチまで移動してくれた。
「それで、何の用だ?」
不機嫌そうな声音で、こちらの様子を窺う。いきなりケンカ腰だが、それも仕方ないことだとは思う。オレはカバンから今日受け取ったばかりの試験結果を取り出すと、それを華那の父親に手渡した。
「以前、大見得を切った試験結果です。あれだけ堂々と宣言したのに、不甲斐ない結果で。黙っておこうかとも思ったんですけど、それもやっぱり違うかなと・・・」
無駄かも知れないと思いながら、たった今感情に任せて口から飛び出しそうになった言葉を吐き出す。
「あ、あの、もう一度、もう一度だけチャンスを貰えませんか。次は絶対に、結果を残しますから!!」
華那の父親は、ゆっくりと視線を試験結果からこちらに移すと口を開いた。
「キミは、一体何を目指しているんだ?」
質問の意味が分からず、反応に困って黙り込む。
「総得点470、全体の偏差値71。十分に凄い結果だと思うのだが」
引き続き反応できないでいると、華那の父親が大きなため息を吐いた。
「私はね、別に学力が全てだとは思っていないし、学歴で幸せになれるとも考えてはいない。ただ、あった方がいい、とは思う。実際に、社会に出ても理不尽な学歴差別はあるし、学閥などというものも未だに存在する。否応なしに、そんな不条理なことに直面し、絶望することもある。
私には今さらどうすることもできないが、娘やキミのような若い子達には、まだまだ可能性も時間もある。それならば、少しでも理不尽に立ち向かえる力と、それに備える努力をして欲しいと思う。その努力は、他の場面でも必ず約に立つ。私はね、可能な限り、娘には苦労して欲しくはないのだよ」
父親としての言葉に、意味もなく全身が震えた。
自分の言葉が全て陳腐に思えて何も口にできないでいると、華那の父親が背中を向けながら零した。
「明後日、帰宅すると聞いている」
街灯から外れていく後姿に、無意識に頭を下げていた。
『 まだまだ許してもらえない。と、受け止める。 』 ・・・ 29 へ
『 認めてもらえた。と、解釈する。 』 ・・・ 67 へ
暗闇に沈む公園の中かから追い掛けるように、通り過ぎようとする背中に声を掛けた。
「こんばんは、少しだけいいですか?」
不意に背後から声を掛けられ、華那の父親の肩が跳ねる。それはそうだろう。もし自分が逆の立場だったら、大声で叫んでいるところだ。華那の父親は声の主がオレだと分かると、身体ごと振り返った。
「キミは・・・」
「少し前にお伺いした真鍋です。少しだけ時間、いいですか?」
華那の父親は小さく頷くと、一緒に街灯に照らされたベンチまで移動してくれた。
「それで、何の用だ?」
不機嫌そうな声音で、こちらの様子を窺う。いきなりケンカ腰だが、それも仕方ないことだとは思う。オレはカバンから今日受け取ったばかりの試験結果を取り出すと、それを華那の父親に手渡した。
「以前、大見得を切った試験結果です。あれだけ堂々と宣言したのに、不甲斐ない結果で。黙っておこうかとも思ったんですけど、それもやっぱり違うかなと・・・」
無駄かも知れないと思いながら、たった今感情に任せて口から飛び出しそうになった言葉を吐き出す。
「あ、あの、もう一度、もう一度だけチャンスを貰えませんか。次は絶対に、結果を残しますから!!」
華那の父親は、ゆっくりと視線を試験結果からこちらに移すと口を開いた。
「キミは、一体何を目指しているんだ?」
質問の意味が分からず、反応に困って黙り込む。
「総得点470、全体の偏差値71。十分に凄い結果だと思うのだが」
引き続き反応できないでいると、華那の父親が大きなため息を吐いた。
「私はね、別に学力が全てだとは思っていないし、学歴で幸せになれるとも考えてはいない。ただ、あった方がいい、とは思う。実際に、社会に出ても理不尽な学歴差別はあるし、学閥などというものも未だに存在する。否応なしに、そんな不条理なことに直面し、絶望することもある。
私には今さらどうすることもできないが、娘やキミのような若い子達には、まだまだ可能性も時間もある。それならば、少しでも理不尽に立ち向かえる力と、それに備える努力をして欲しいと思う。その努力は、他の場面でも必ず約に立つ。私はね、可能な限り、娘には苦労して欲しくはないのだよ」
父親としての言葉に、意味もなく全身が震えた。
自分の言葉が全て陳腐に思えて何も口にできないでいると、華那の父親が背中を向けながら零した。
「明後日、帰宅すると聞いている」
街灯から外れていく後姿に、無意識に頭を下げていた。
『 まだまだ許してもらえない。と、受け止める。 』 ・・・ 29 へ
『 認めてもらえた。と、解釈する。 』 ・・・ 67 へ



