SIDE:A / SIDE:B

 最寄り駅から電車に乗り、大型ショッピングモールに向かう。ここ皐月市の中心部にある円筒型の巨大な商業施設は、寂れた商店街とは対照的に中高生を始めとする若者で賑わっている。
 2駅ほど電車に揺られ、皐月駅で下車する。駅から15分ほど歩くと、正面玄関の巨大なアーチが目の前に見える。中学生の頃、部活が早く終わった日に、皆で訪れてはフードコートで騒いでいた。「全国大会に行くぞ!!」なんて雄叫びを上げて、大迷惑だったと思う。

 平日の午後だというのに、ショッピングモールには制服姿の学生や、明らかに中高生だと思われる私服姿の同年代の人達で溢れている。まあ、理由は分からないもない。
 ひとまず、フードコートの端に座り周囲を見渡す。身内で盛り上がっている人達はいるものの、「ウエーイ」とかマンガで見るような光景はない。自分が目指す場所はそこにあるのであるが、やり方が分からない。手本になる人達が欲しいのだ。

 1時間ほど眺めていたものの、都市伝説なのか「ウエーイ」は聞こえてこない。
 諦めかけた頃、フードコートの空気が揺れた。雰囲気が変わり、周囲にいる人達の視線が一箇所に向けられた。

「ウエーイ!!」

 マンガの吹き出しでしか見たことがなかったセリフが、生声で耳に届いた。反射的に立ち上がらなかったのは奇跡に近い。皆と同じように、声がした方向を注視した。そこには、理想とする、チャラ男の姿があった。しかも3人。白いブレザーを羽織った高校生だ。
 一人は肩まで伸ばした髪を金色に染めた、見るからに軽い雰囲気の男子生徒。先ほどの見事な「ウエーイ」は彼のもののようだった。2人目はブレザーの下に赤いパーカーを着ためでたい色彩の男子生徒。校則的にどうなのかは不明であるが、耳からは直径が3センチ以上あるピアスがぶら下がっている。常に左右に揺れていて落ち着きがないが、おそらく何らかのリズムをとっているのだろう。そして3人目は、180センチ以上はる長身のイケメン。静かに立っていればモデルにも見える容姿であるが、スマートフォンから大音量でアイドルグループの曲を流しながらキュートなダンスをしている。3人はフードコートの一画に、再び「ウエーイ」という掛け声とともに座った。

 ものすごい注目を浴びているが、3人は我関せずと泰然とした態度を示している。目指すべき場所はあそこにあるが、近くて遠い。フードコートで「ウエーイ」と叫ぶ自信が持てない。


『 それでも、3人を観察して自分のものにしたい。 』 ・・・ 54 へ

『 あれは無理だ。違うベクトルのチャラ男を目指したい。 』 ・・・ 62 へ