「やっぱり、やめます」
「は?」
自分で惑わすような発言をした美容師のお姉さんが、マヌケな表情をして固まる。
冗談のつもりだったのだろう。ここまで来て中止するなど思いもしなかったに違いない。最初は気分一新のためにも青髪にしようと思ってはいた。でも、いざ鏡の前に座ると、髪が青く染まる自分を鮮明にイメージできて躊躇してしまう。「日本人の顔に青はないわあ」とか、自分に突っ込みを入れてしまう。
「えーじゃあさ、青にシルバーのメッシュ入れればいいじゃん。そうしたら、サバみたいでカッコいいと思うけど」
後ろで眺めていた瑠架が口を開く。
「サ、サバ?」
「うん、煮付けとか好きなんだ」
真剣に悩んでいたのがバカらしくなる。
「じゃあ、サバみたいな感じでお願いします」
「え、あ、サバね。オッケー」
絶対に分かっていないお姉さんは、作り笑顔全開で作業を始めた。
人生で初めて髪を染めた。
何か、自分が全く違う人間に入れ替わった気がする。
身は同じだけど、鏡に写る自分がパラレルワールドの別人にする変わったようだ。
リセット、リスタート、復活の呪文を間違って偶然別のデータにアクセスしてしまった感覚。元の自分ではないなら、何だってできる気がする。何もかも置き去りにして、全く違う自分になれると思う。
・・・ 27 へ
「は?」
自分で惑わすような発言をした美容師のお姉さんが、マヌケな表情をして固まる。
冗談のつもりだったのだろう。ここまで来て中止するなど思いもしなかったに違いない。最初は気分一新のためにも青髪にしようと思ってはいた。でも、いざ鏡の前に座ると、髪が青く染まる自分を鮮明にイメージできて躊躇してしまう。「日本人の顔に青はないわあ」とか、自分に突っ込みを入れてしまう。
「えーじゃあさ、青にシルバーのメッシュ入れればいいじゃん。そうしたら、サバみたいでカッコいいと思うけど」
後ろで眺めていた瑠架が口を開く。
「サ、サバ?」
「うん、煮付けとか好きなんだ」
真剣に悩んでいたのがバカらしくなる。
「じゃあ、サバみたいな感じでお願いします」
「え、あ、サバね。オッケー」
絶対に分かっていないお姉さんは、作り笑顔全開で作業を始めた。
人生で初めて髪を染めた。
何か、自分が全く違う人間に入れ替わった気がする。
身は同じだけど、鏡に写る自分がパラレルワールドの別人にする変わったようだ。
リセット、リスタート、復活の呪文を間違って偶然別のデータにアクセスしてしまった感覚。元の自分ではないなら、何だってできる気がする。何もかも置き去りにして、全く違う自分になれると思う。
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