SIDE:A / SIDE:B

 あなた(・・・)は通り掛った公園のベンチで、夜空を見上げて動かない少年を見掛けた。
 制服を着ていないが、以前同じ場所で話しをした高校生だとすぐに分かった。19時過ぎまで明るい時期とはいえ、もう日没からは1時間近くが経過している。星が見え始める、全てが濃紺に染まる時間帯だ。

 歩く速度を調節して横目で彼の様子を窺った。
 彼はいつでも悩んでいるようだ。
 以前いろいろと話しをしたため、あなた(・・・)は友人のような感覚で声を掛けた。

『やあ、久し振りだね』
 そう声を掛けると声音を覚えていたのか、泣きそうな顔でこちらに振り向いた。そして、青春全開、爆発しろ!!叫びたくなる話しを聞かされることになった。
 彼が悩んでいたのは、誰もがぶつかる難題だった。
 でも、あなた(・・・)は、その答えを知っていた。


『キミがいるこの世界は、ドラマの中でもなければ映画の中でもない。
 主人公でもなければ、ヒーローでもない。
 泥臭い生身の人間だ。
 情けなくて、自分がちっぽけに思えて泣きたくなる。
 何度も失敗して、何度も挫けて、何度も自分が嫌になって、何度も自暴自棄になって、何度も助けられる。そんな自分が、好きな人を幸せにできるのか、大切な人を守っていけるのかって、不安になる。一番信用できないのは自分だから。
 だから、自分より優れた人に大好きな人を、誰よりも大切な人を任せようとする。その方がきっと幸せになれるからと思うから。

 でもね、それは違うよ。
 違うんだよ。
 それは、ただ逃げているだけだ。
 どうして、自分で守ろうとしない。
 どうして、自分が幸せにしようとしない。
 これはキレイごとではない。
 覚悟の問題だ。
 キミは、また逃げるのか。
 なぜ、戦おうとしない。
 弱い自分を認めることができたのであれば、なぜ、その自分と対峙しない。
 負け犬は二度と立ち向かえない。
 でも、キミは立ち上がった。
 まだ、負けていないんだ。
 自分自身と戦うべきだ。
 彼女を失ってから気付いても遅いんだぞ。

 そもそも、キミは一番大事なことを忘れている。
 それは、彼女の思いだ。
 彼女が一緒にいたいと願うのであれば、キミはその思いに全力で応えるべきだ。
 キミにしかできない。
 それを自覚して、覚悟を決めないとね』


 顔が火照るのを感じながら背を向ける。
 我ながら熱いセリフを繰り返したと思いながら、少し足速に公園を後にする。

 あなた(・・・)の去った公園に、彼が誰かに連絡する声が響いた。


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