SIDE:A / SIDE:B

 放課後、部活に入るつもりがないオレと華那は、早々に学校を後にすると商店街等が立ち並ぶ中心街に繰り出した。この目立つ白のブレザーで街を歩くことに抵抗はあるものの、一度帰宅する手間を考えると妥協するしかない。
 電車の窓から外を眺めていると、市の中心部に建つ特徴的な建物が目に写る。以前よく行っていたショッピングモールだ。何をする訳でもなく、元友達とフードコートやゲームセンターに入り浸っていた。もう、あんな安穏とした時間を過ごすことはないだろう。

 ブレザーの裾を引っ張られて、傍にいる華那に視線を落とす。
 なぜか心配そうな表情をしている華那に、首を傾げて微笑む。
 すると、華那も同じように柔らかく笑った。

 それから5分もしないうち皐月駅に到着した。目的地はここで下車し、徒歩15分ほど歩いた位置にある円筒形の建物だ。先ほど電車の中から見えたショッピングモール。受験勉強もあって、もう半年近く来ていない。特にこれといって特別な店舗や物がある訳ではないが、ゲームセンターや映画館、フードコートなど全てのものが揃っている。そのため、時間を潰したり気分転換するには都合が良い場所なのだ。

 正面の入口から中に入り、3階まで吹き抜けになっているエリアに足を踏み入れる。
「もう半年振りくらいかも」
 思わず零れた言葉を華那が拾った。
「私は3回かしか来たことがないから、結構ドキドキするよ。中学の時は下校途中に寄り道することは禁止されていたし、ショッピングモールには生徒達だけで行ってはいけないことになってたから。それに、うちのお父さんはショッピングモールとか行かないし」
 キョロキョロしている華那を見詰めながら、県内でも有数のお嬢様学校に通っていたことを思い出す。そういうことであれば、ゲームセンターなどは入ったことさえないのかも知れない。
「とりあえず、3階に移動しようか。というか、クレーンゲームとかした事がないんじゃないの?」
 意地悪く笑うと、華那が口を尖らせる。
「もう、バカにして。それくらい知ってるって」
 やったことがある、とは言わないことからも分かるように、嘘が吐けない性格なのだ。

 エスカレーターで3階に上がり、フードコートに隣接するゲームセンターに向かう。そこには大小様々な景品がセットされたクレーンゲームが50台以上並んでいた。その光景に興奮気味の華那は、1台ずつクレーンゲームを眺めて回っている。景品の品定めをしているのかも知れないが、そんなに甘くはない。
 その後、ある景品に心を奪われた華那は悪戦苦闘した末に、どうにか得体の知れないキモカワイイ謎のキャラクターを取った。

 満面の笑みを浮かべて歓喜する華那。
「もしかして、黒井さん?」
 その時、不意に華那の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 振り返ると、そこに桜坂高校の制服を着た生徒が立っていた。知人のようではあったものの、華那の表情が一気に曇った。


『 場所を変える 』 ・・・ 35 へ

『 華那に誰なのか訊ねる 』 ・・・ 14 へ