SIDE:A / SIDE:B

 不思議な出会いだった。
 途方に暮れていると、通りすがりの人に声を掛けられた。普通であれば、見知らぬ人に自分のことを話すことなどしない。それなのに、全てを話してしまっていた。本当は、誰かに聞いてもらいたかったのかも知れない。何かアドバイスが欲しかったのかも知れない。そういう意味では、自分の思いを整理することもできたし、何をすればいいのか考えるきっかけにもなった。

 公園から遠ざかっていく背中に頭を下げ、自分にとって一番大切なことを考える。
 学年で1番の成績なんかではなくて、元友達に見付からないようにする逃げ足でもなくて、いつも隣にいた華那だ。余りにも近くにいたから気付いていなかった、たった2ヶ月で存在が当たり前になっていた華那だ。

 ―――――華那に会いたい。

 華那は転校してしまった。しかも、編入先は隣の県にある全寮制の女子校だ。オレでさえ規律が厳しい学校であることを知っている名門だ。当然、会いに行ったからといって、面会が許される可能性はない。夏休みがあるのかどうかさえ怪しいが、仮に帰省できたとしても、あの父親がオレに会わせてくれるとも思えない。
 そうだとすれば、一体どうすればいいのだろうか?

 ―――――諦める?

 いや、それは、それだけは絶対にない。
 それなら、どうすればいいのか?
 どうすれば、また華那と一緒にいることができるだろうか。
 あの父親を納得させなければ、以前と同じように華那と会うことさえ許されない。だからといって、華那と同等の、あのとき父親が言ったような学力はない。あの考えが歪んでいようが、説き伏せる材料がなければ話し合いさえできない。でも、オレに偏差値70とかは無理だ。そんな成績を取ったことは一度もない。あのレベルになると努力ではどうにもできない壁がある。生まれながらに頭の構造が違う。普通の人が5時間かけて理解することを、彼等は10分で修得してしまう。何もかもが根本的に違う。いくら努力しても届かない。生まれながらの才能なのだから、一般人には無理だ。あれは次元が違う。どれだけ努力しても届かない。元々の能力が違うのだから、オレには無理だ。天性のものだから、センスがないのだから、環境が悪いのだから、参考書がないのだから、教えてくれる人がいないのだから、時間が足りないのだから、だから、無理だ。だから、できない。

 ―――――違う。

 そうではない。
 できない理由を並べてはダメだ。
 どうすればできるのか、を考えなければならない。
 自分に何ができるのか。
 自分は何をしなければならないのか。


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