SIDE:A / SIDE:B

「そうなんだ」
 と相槌を打って聞き流す。
 横目で黒井の様子を窺うと、落ち込んだ様子で再び自分の膝に顔を埋めた。
 本当ならここで「一緒に登校しようよ」などと声を掛けるところなのだろうが、オレは今の自分に全く自信がない。こんな人間が一緒にいてもいいのだろうかと、そのことが真っ先に頭を過ぎる。それに、もし拒絶されてしまうと、そのショックに今の自分が耐えられると思えない。黒井はどう思っているのだろうか。公園を見渡すふりをしながら、もう一度黒井の様子を窺う。

 ―――――ああ、オレはバカだ。そんなことを考えるまでもなかった。
 今も小刻みに震える肩は、誰かを必要としている。そうでなければ、自分よりも早くここにいる訳がない。泣き腫らした顔で、会いに来たりしない。それに、何より自分自身が他人の存在を、黒井の存在を必要としている。

 黒井の方を向き、昨日より50センチ近くなった距離から再び声を掛ける。
「あの、さ、4月から、一緒に登校しないか? あ、嫌だったら別にいいんだけど。同じ学校なんだし、同じ方向なんだし、同じ駅なんだし・・・」
「同じマンションに住んでるんだし? うん、一緒に行こうよ」



 このとき初めて、気持ちを込めて笑った黒井を目にした。  ・・・ 30 へ