SIDE:A / SIDE:B

 駆け寄って、どうする?
 今さら、掛ける言葉も、話す権利もないじゃないか。
 足が動かない。
 喉が嗄れて声が出ない。
 あの頃、どんな表情をしていたのか思い出せない。
 神田(かんだ) 莉緒(りお)、幼稚園から一緒の元幼馴染らしき存在。
 少しずつ遠くなる背中を見送る。

 立ち尽くしたままであったにも関わらず、気付かれることもなく見えなくなった。
 左手でフレミングの法則を作り、右手でも対照的に形作る。親指と人差し指、中指を伸ばして身体の前でポーズを決める。
「ウエーイ」
 人としての力は天に、思いは相手に、感情は自分に。
 大きく息を吐き、目の前に見える自宅のマンションへと歩き始めた。

 帰宅してすぐに自室に入ると、机の上に置いたままにしていたスマートフォンを手にする。ディスプレイを表示すると50件近い通知サインが表示されている。それは、捨てきれない未練というものだった。それとも今この時をもって決別する覚悟をした。
 スワイプしてディスプレイから消し、続いてアドレス帳を開く。そこから3人をチョイスし、即座に受信拒否の設定をする。これで、もう前に進むしかなくなった。緊急事態が起きた時に連絡がつかないだとか、自分自身に苦しい言い訳をしなくて済むように、完全に過去との決別を果たした。


 さあ、もう入学式は来週だ。  ・・・ 101 へ