SIDE:A / SIDE:B

 その日の夕方、オレは皐月が丘駅のホームにいた。
 南口の改札を目の前にして、ホームに設置されているベンチに座っていいる。5月も終わりそうなこの時期は、日が傾き始めると一気に気温が下がる。爽やかと言うには少し肌寒く、制服の上着を着込むと少し苦しく感じる。そんな中途半端な季節だ。それはまるで、今の自分の気持ちを映し出す―――――
「って、何でオマエ達もベンチに座っているんだよ!!」
 左側では大介が背もたれに身体を完全に預け、上を向いた状態で大口を開けて寝ている。虫が飛んできて、口の中で巣を巣来ればいいのに。そして、右側には瑠架が荷物をベンチに置いて、ステップの練習をしている。上手過ぎて目立つから、本当に止めてもらいたい。
「えーだって、絶対に何か事件が起きるよね。そんな面白・・・そんなの心配で、1人にはできないよ」
「今、面白そうって・・・」
 まあ、確かに1人だと心細いから居てくれた方がいいのではあるけど。

 嘆息しながら電車の到着時間を知らせる電光掲示板に視線を送ると、そろそろ時刻は19時になろうとしていた。その時だった、南口の改札を抜けてきた集団から、以前耳にした嫌味な声が聞こえてきた。
「おや、真鍋君ではないですか。コッチは南口、キミ達の利用が許されてるのは北口だけではないのですかあ?」
 鳴沢だ。前回とは違い、莉緒に付き纏っている訳でなさそうだった。部活が終わって帰宅するところなのか、2人の皐月中央高校の生徒と一緒にいた。いつもなら鬱陶しいだけの存在だが、今日のオレはこの鳴沢を待っていたのだ。

 ベンチから立ち上がり近付いて行くと、鳴沢はビクッと肩を跳ね上げ周囲を見渡した。耳にした話しによると、前回遭遇した後、白いブレザーの先輩方に連れ去られたらしい。
「鳴沢、この前は散々罵ってくれたよな。いや、別に怒ってる訳じゃないんだ。オマエが言ったことも半分は当たっているしな」
 自分が散々嘲笑した内容を肯定されたことで、早くもマウントを取ろうとしてくる鳴沢。
「そうだろ、そうだろ。他の人達はともかく、オマエが仕方のないバカだってことは事実だからなあ」
「確かに、そうかも知れない」
 更に肯定すると、乗ってくるかと思われた鳴沢が口を閉じた。
「いや、そんなに警戒するなよ。本当にそうだったと思っているだけだ。ただ、言われっ放しってのは性に合わないから、来週の日曜日に開催される全国実力テストで偏差値勝負しないか?」
 提案を受けた鳴沢がニヤリと笑う。

「その勝負、受けても構わない。が、罰ゲームを決めようじゃないか」


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