SIDE:A / SIDE:B

 ―――――会いたい!!

 一度思い始めると、もうどうにも止まらない。
 これまで考えないようにしていたけれど、一度タガが外れてしまうと抑えられない。
 今すぐにでも会いに行きたい。
 会いたくて、会いたくて我慢できない。
 明日までなんて、もう待てるはずがない。

 全力疾走で帰宅する。
 インターネットで白蓮女学園の場所を調べると、隣県の県庁所在地にあることが分かった。
 地図で場所を確認する。
 そのまま学校の最寄り駅を探し、ここからの交通手段を調べる。
 どうにか手持ち資金で交通費は足りそうだ。
 私服に着替えながら既に帰宅している母親の元に駆けて行く。
「アンタ、どっか行くの?」
「ちょっと隣の県まで行ってくる」
 母親は冗談だと思ったのか、軽い口調でいつものように言葉を続ける。
「あまり遅くならないようにね」
「たぶん、早くても明日の昼頃になると思う」
 夕食の用意をしていた母親の手が止まり、視線をこちらに向ける。母親としての目が、オレの目を射抜いた。
「もしかして、お隣の華那ちゃん?」
「もちろん」
 数秒、厳しい目でオレを見詰めた後、「ふう」と大きくため息を吐いた。
「事故には気を付けて。ちゃんと2人で帰ってくるんだよ」
 母親はそう言うと、財布から出した1万円札を手渡してきた。
「危ないから、野宿はやめなさい」
「分かった」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」

 自宅を出ると駅に急ぐ。
 この町の駅から隣県の県庁所在地までは、電車で約2時間。途中で1回乗り換え、そこから約20分。郊外ではあるがある程度開けたエリアであるため、駅周辺にはビジネスホテルが点在している。電車に乗っている間にホテルを予約し、ひとますそこを目指す。インターネットの情報によると、学園内に寮があるため、校門で待っていれば間違いなく会うことができそうだ。

 通勤ラッシュの時間帯であったため、窮屈な空間で左右に揺られる。周囲の人波に揉まれながら、揺れているのが身体だけではないことに気付く。
 明日、会いに行って無視されたらどうしよう。
 もしかしたら、会いに行くことが迷惑かも知れない。
 今さら何を、とは思うが、それでも不安が増していく。
 それでも、会わずにはいられない。
 ダメだった時は、その時に考えよう。全てのことに対し、完璧に準備するなんて到底不可能だ。オレは神様ではないし、先のことなんか分からない。不測の事態なんて、山のとうにあるさ。ただ、大事なことは、失敗した時に腐らないこと。思い切り凹んだ時には、情けない自分を認めて、もう一度立ち上がる勇気を持つことだ。それが分かっている今、怖いことなんか何もない。


 やがて通勤ラッシュは終息し、いつの間にか悠々とシートに座ることができていた。  ・・・ 72 へ