SIDE:A / SIDE:B

 公園から西向き、公園植えられた広葉樹のてっぺんより更に上に見えるマンション。そのマンションの最上階の先、近隣で一番高い建物が見える。35階建てのマンションだ。黒井が飛ぼうとした位置の約5倍の高さがある。
 そのマンションがある方向を指さして問い掛ける。
「あそこ、行ってみる?」
「うん」
 冗談と本気が50:50の問いに対し、黒井はマンションの最上階に視線を向けて頷いた。

 オレ達はお互いにジャージにサンダルという格好で縦に並んで歩く。距離が遠い2人が並んで歩けるほど歩道は広くなく、そもそも、横に並ぶほど親しくもない。平日の昼間のため通行人は見当たらず、近所のオバサンが井戸端会議をしていることもない。

「高っ!!」
 5分も歩かず目的地に到着した。最上階を見るためには、空を見上げる感じで仰ぎ見る必要があった。
「即死だね」
 同じように顔を上に向けている黒井の目は、まるで焦点が合っていなかった。
「それよりも、中に入れそうにないな」
「だね」
 オレ達の視線の先には、うちのマンションとは比較にならないエントランスが伸び、その先にホテルのような受付カウンターがあった。住民のふりをして侵入することはできそうにない。夜間がどういう対応になっているのかは分からないが、おそらく万全のセキュリティだろう。

「ここ、かなりお高いマンションだと思う」
「私もそう思う」
「一旦、帰ろうか」
 黒井はオレの提案に同意して頷いた。


 元いた公園に戻るため、高級マンションを後にした。  ・・・ 19 へ