SIDE:A / SIDE:B

 いや、やはり、自分には関係ないことだ。
 他人のことどころではない。ぶっちゃけ、彼女の代わりに自分がダイブしたいほどだ。何の関係もない人間がどうしようが知ったことではない。たとえ自分が見なかったことにして、その直後にアスファルトに横たわることになろうと関係ない。血だまりから睨まれたとしても、仕方ないと割り切ってみせる。

 乗り出していた身体をそのままに、ここ7階のベランダから周囲を見渡す。適度に都会であるためか、隣も、その隣も今の自分がいる場所よりも高い建物ばかりだ。少し遠くに意識を飛ばすと、先日卒業した中学校の校舎が見える。駅前には2年間も通った学習塾の看板が堂々と設置されている。
 続けて視線を下に向けた。
 ほどほど遠くに黒いアスファルトで舗装された駐車場が見える。ここからの高さと彼女の重さを予想すると、条件反射でどれだけの衝撃が発生するのか計算してしまう。神の奇跡でも起きない限り、ほぼ100パーセントの確率であの世逝きだ。

「ふう・・・」
 思わず、深々とため息を吐いてしまう。
 自分には飛べない。
 ここから飛ぶことはできない。
 自分は今、この世の終わりのような出来事に遭遇している。それでも、ここから飛び降りるという選択はできない。それならば、平然と飛ぼうとした彼女は、一体どんな体験をしたというのだろうか?


 気が付くとオレは彼女に話し掛けていた。   ・・・ 16 へ