SIDE:A / SIDE:B

 謝罪するといっても、誰彼構わず頭を下げて回る訳にもいかないし、教壇に立って演説をすることもできない。そうなれば、一人ずつ折を見て話しをするしかない。そういう面で考えれば、クラスで孤立している島崎は話し掛けやすい立場にある。

 実力テストの発表以来、窓際が特等席になっている島崎に歩み寄ると声を掛けた。
「お、おはよう」
 男子生徒に挨拶しているだけなのに、声が上ずる。考えてみれば華那が転校して以降、クラスメートと初めて言葉を交わしている気がする。
 島崎は不意に声を掛けられて驚いたものの、顔を上げてすぐに俯いてしまった。
「実質学年で1位になった秀才様が特進クラスで一番バカな俺に何の用だよ」
 思わずたじろいでしまうが、ここで退いてしまっては何も始まらない。
「いや、学力なんて、ほんの一部の能力でしかないから」
「はあ?それはできる側からの挑発なのか?いくら落ちこぼれだからといっても、プライドはあるぞ!!」
 立ち上がろうとする島崎の肩を押さえて留める。そんなつもりは全くなかったが、確かにそう受け止められる可能性もある。
「いや、そうじゃない。本気でそう思っているんだ」
 オレを睨み付けていた鋭い目が揺れる。それでも、視線はオレの目を捉えたまま動かない。
「・・・いや、確かに下に見ていたかも知れない。それは、本当に悪いと思っている。いきなりこんなことを言われても信じられないとは思うが、オレに初めて集ったクラスメートをまとめるような能力はないし、それができるのは凄いことだと思う。オレはただテストで良い点を取っただけだ。勉強さえすれば誰にだってできる。勉強なら分からないところは教えるし、次で挽回すれば良いだけじゃないか。って、何が言いたいのか分からなくなったけど、まあ、つまり、あれだ、いろいろ考えることがあって反省もしたから、これからは、よろしくっていうか」
 敵対的な態度をとっていた島崎が突然吹き出す。
「何だそりゃ」

 オレ達のやり取りを遠巻きに眺めていたクラスメート達を見渡す。
「あのさ、勉強くらいしかできないけど、もし、必要なことがあったら声を掛けて欲しい。できることは力になるし、一緒に考えるよ。それで、もし、オレが困って相談する時には力になってもらいたい」
 そう言って頭を下げる。
 この言葉に反応する人はいない。
 誰かが好感度を上げて手を差し伸べる、なんてこともない。
 でも、これでいい。
 スタート地点としては上出来だ。


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