SIDE:A / SIDE:B

 ファイナルアンサーに一瞬迷ったものの、当初の予定通り髪を青に染めた。所々にシルバーのメッシュを入れてもらったため、そこはかとなく青魚のサバ感がある。生臭くはないが、シルバーの部分が反射してギラギラする。
 それにしても―――鏡の中でフレミングの法則ポーズで決める自分を見て、まるで別人のようだと感嘆する。チャラい。チャラさが300%アップしている。これで猫背でユラユラ揺れながら歩いていたら、完璧なチャラ男の完成だ。

「サバ男、オレもう時間だから行くわ」
「サバ言うなっ」
 気持ちを新たにしているオレに、なぜか一緒について来ていた大介が告げる。週4で夕方からバイトに入っている。理由は聞いていないが、何か目的があるらしい。そのためにお金を貯めているとか。背中を向けてチャラ男の先輩としてチャラさ全開でポーズを決めて去って行く。

 瑠架の紹介ということで値引きして貰ったこともあり、店を出た所で礼を言う。
「ありがとな、思ったより安くついたよ」
「いーよ、いーよ、気にしないでサバ」
「サバ言うなっ」
 瑠架はイタズラっ子ぽい口調で悪態をつくと、大口を開けて笑う。
「アタシもそろそろ行かないと」
「ダンスの練習?」
「そ、中央アリーナの北側でね。あそこ、いー感じなんだよ。一回見にくれば?」
「行かねー」
 瑠架は中央アリーナの北側のウインドウで、夕方からダンスの練習をしている。夕方になると周囲が暗くなることもあり、ガラスに自分の姿がキレイに写るらしい。その前でダンスをして、上手く踊れるように練習しているとのこと。ゲームセンターで見せたダンスも、練習あってのことなのだ。
 夕暮れの雑踏に消えていく背中を見送りながら、昂ぶる感情を無理矢理に抑え付ける。一度ドロドロに溶けた思いは、全く違う形の成虫になったのだ。もう、二度と元に戻ることはない。

 3年前にこの街にバスケットボールのプロチームが結成された。片田舎の弱小チームで、いつも最下位争いをしている。有名選手もいなければ資金も無いのだ。当然の結果だろう。それでも、県内唯一のプロスポーツチームということもあり、地元の応援は熱い。試合ともなれば、市の体育館である中央アリーナには大勢の観客が押し寄せる。
「いつか、あのチームをリーグ優勝させるんだ!!」
 なんて、バカなことを口にしていた中学生がいた。
 それに賛同し、必死に練習していた仲間達がいた。
 もう、過去の話だ。その世界線は途絶えた。このストーリーに続きはない。


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『 いや、無理だ。もう頑張らない。 』 ・・・ 75 へ