SIDE:A / SIDE:B

 ―――――でも、これでいい。
 これまで散々自分を過大評価し、逃げ回ってきたんだ。いつも最後は自分の失敗から目を背け、力不足を認めることをしなかった。でも、もうこれで逃げ場は無くなった。言い訳することも許されない。全国共通実力テストまであと2ヶ月程度。限界を超えて頑張るしかない。

 あと、大事なことがもう1つ。
 何のために一大決心をして宣戦布告をしたのか。
 スマートフォンを手に取り、いつもアクセスしていたサイトを開く。そこは、毎日眠るまでの時間を共に過ごした2人だけのルーム。「明日から一緒に登校できない」に対し「何で?」と質問を返して以降、空白のまま止まっている。あれから何度か開いてみたが、何も書き込まれていない。全寮制で厳格な校則に支配されている白蓮女学園は、外界と接触できる通信機器は使用不可だ。だから、このルームは動かないし、ここに何か書き込んだところで誰かが見ることはない。
 それでも、ここで宣言せずにはいられない。
 宣言しなくてはならない。

 1ヶ月以上何も書き込まれていない空欄に、思いを込めて文字を打つ。華那が読むのはいつになるのか分からない。それでも、だからこそ、ここに宣言する。自分の覚悟を示して、自分に対する甘さを断つ。

>華那へ
 終業式の日、必ず迎えに行くから。

 これだけで十分に華那には伝わるはずだ。
 よし!!・・・・・OKボタンが押せない。
 自信が無い。
 難問満載の全国共通実力テストで495点以上、低くても490点とか、到底できる気がしない。多分、今の実力で取れる点数は430点そこそこ。これから60点以上増やすなんてできると思えない。それでも、やるしかない。
 何度も自問自答を繰り返した末に、ついにOKボタンをクリック。誰の既読も付かないコメントが、2人のルームに表示された。

 これまで経験したことがないようなプレッシャーが、ズシリと肩にのしかかる。
 男子一日に百戦す――――物事を成し遂げるためには、多くの困難や試練を乗り越え、絶えず努力し、自分自身を鍛え続けなければならない。怠慢を求める感情に打ち勝ち、隙があれば逃亡を図ろうとする脆弱な精神をコントロールしてみせる。

 スマートフォンを充電器に挿し込み、ベッドの枕元に置いている目覚まし時計に視線を送る、既に時刻は23時を過ぎようとしていた。


『 今日は十分に睡眠をとって、明日から頑張ろう!! 』 ・・・ 65 へ

『 1分1秒でも無駄にしないように、今日から始める。 』 ・・・ 81 へ