SIDE:A / SIDE:B

 声を掛ける―――――などという選択肢は無い。

 一番仲が良かった友達が着ている制服は、今どき珍しい学ラン。この近辺で未だに学ランの学校は、皐月中央高校しか存在していない。一緒に進学しようと約束した学校。他の2人は合格して、オレだけが落ちた。声を掛けられるはずがない。
「友達がいるの?」
 全ての事情を知っている華那が心配そうに声を掛けてきた。
「そんな感じ」
「で、どっちに行ったの?」
「右」
 そこまで聞くと、華那はスマートフォンを手にして改札に向かう。そして左側に曲がるとこちらを見て手招きをした。その姿を見て、オレは慌てて改札を抜けると左に進んだ。

 ホームに立って電車を待つ間、華那がこちらに振り向いて口を開く。
「基本的にずっとそっちにしか行かないから、私達は左に向かえばいいよ。ほぼ100パーセント出会うことはないと思うよ」
「どこ情報?」
「わ・た・し」
 華那が自分を指差しながら答えた。
 普通なら呆れてしまうところではあるが、気を紛らわせようとしていることは明白だ。華那のそんな優しさが嬉しい。

 電車の中は、白のブレザーと黒い学生服しか見当たらない。割とスペースがあるが、今日は上級生がいないからだろう。3学年が一緒になると、かなり混雑しそうな雰囲気だ。
 乗車して3駅。学校の最寄り駅に到着する。
 電車を降りると神楽坂高校は北口、皐月中央高校は南口。もう大丈夫だ。



 二度と、元友達に声を掛けることはないだろう。  ・・・ 18 へ