SIDE:A / SIDE:B

 隣に並んだオレを見上げ、華那が目を見開いた。
「一緒に事情を説明するよ」
「でも・・・」
「怒鳴られても、殴られたって構わない。そもそも、誘ったのはオレだしね」
 華那に笑って見せる。
 本当に、それだけの覚悟は決めたんだ。だから作り笑いではない。

 華那がキーを挿し込んで回す。
 カチャリという音がして開く。
 意を決した華那がドアを引く、ガチャンと金属音が響いて途中で止まった。チェーンロックが施されていたのだ。それを知った華那の顔が蒼白になり、ドアを引く手が震え始める。
 絶望する華那を眺めていても何の解決にもならないため、華那に代わってチャイムを鳴らした。1度、2度、3度目でようやく奥の扉が開く音がした。間取りが同じなら奥の部屋はリビングだ。そこから玄関までの廊下を歩く足音が響く。ドスドスという音だけで感情が想像できる。

 玄関の照明が点灯し、予想通りの怒声が浴びせられた。
「何時だと思っているんだ!!門限も守れないヤツは人間として終わっているぞ!!」
 一度ドアが閉まり、ガチャガチャという音の後に再びドアが開く。その瞬間、華那は震える声で謝りながら、必死で何度も頭を下げた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「約束も守れないとか、人間のクズが!!オマエは全寮制の女子校に転校させる。学力だけは高いから、どこにでも編入できるだろう!!」
 怒鳴り付ける父親の前で頭を下げて震える華那。それを目にしたオレは黙っていることができなかった。
「ちょっと待ってく下さい!!華那は、黒井さんは悪くないんです。僕がショッピングモールに誘ったから遅くなったんです。悪いのは僕なんです」
 華那の後ろから割り込んだオレに父親の視線が向けられる。それはまるで痴漢の犯人でも見るような侮蔑に満ちた目だった。
「誰だオマエは?」
「学校の同級生です」
 同級生という言葉を聞いくと同時に、父親が嘲るように笑った。

「同級生?ハハハハハハハハハ、あのバカ学校のか?だからそんなにアホ面なのか。偏差値が50程度のボンクラ学校の生徒が、ウチの子を唆したのか。バカに引っ掛かる娘も愚かだが、無学で頭が悪い学生に無理矢理連れて行かれたのなら今回だけは許してやろうか。まったく、バカな学校のバカに連れ出されるとは。もういい、華那は入れ。オマエは二度とウチの子に関わるな」

 全身が熱くなり、無意識に拳を握り締めていた。



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