SIDE:A / SIDE:B

 時間は最強のサポーターだ。

 遠ざかる背中に頭を下げて納得する。
 確かに、時間が全てを解決する。
 あの日、身体と精神を支配していた絶望感。もうダメだと、本気で思ったのは初めてだった。だから、選択肢は無かった。考えないようにするしかなかった。考えないようにして、時間に任せて意識を飛ばして、希薄にして、攪拌して、負担を軽くして、自分の思考から、他人の記憶から消して、時間が全てをなかったことにしてくれる。そうするしかなかったけど、それが間違っていなかったと、そう言ってもらえて気持ちが楽になった。

 本当は、ずっと思っていたんだ。
 自分は、自分の弱さに向き合うことをせず、厳しい現実から目を背けているだけではないかと。過去から、自分の失敗から逃げているだけなのではないかと。他人のせいにして、自分を正当化しているだけなのではないかと。本当に、ただ、怠惰に時間を潰すことが望んでいたことなのかと。

 もしかして、自分が背負わなければならない責任を放棄しようとしているのか?
 自分自身と向き合うことが恐くて、顔を背けているだけではないのか?
 本当に時間が解決するのか?
 莉緒と出会って思いは無くなっていたのか?
 鳴沢はオレのことを忘れて全てを無かったことにしたのか?

 ―――――否だ。

 逃げていては何も解決しない。
 時間の経過だけでは何も解決しないのだ。  ・・・ 92 へ