SIDE:A / SIDE:B

 結局、毒を吐き出したところで、何も解決しない。

 ・・・もう、いいか。
 隠れて生きるしかない。
 誰とも会わないように。
 目立たないように。
 息を潜めて。

 ベンチから立ち上がる前に、ここまで一緒に来た黒井に視線を向ける。
 自分から誘っておいて、無言で立ち去る訳にもいかないだろう。
 振り向くと、そこには背中を丸めて小さくなっている黒井の姿があった。その姿を目にして、一瞬で自分が過ちを犯そうとしていたということに気付く。
 確かに、オレは生きる価値も無いほどのバカではあるが、人間のクズになった訳ではない。一番つらい時に一緒に行動してくれて、一方的であっても話しを聞いてくれた人を、自分の都合だけで置き去りにするようなことはできない。黒井は、項垂れただけのオレとは違い、衝動的に飛び降りようとした。心のキズはオレよりも深い。二人でいたとしてもキズの舐め合いになる可能性が高いし、一緒に沈むだけになるかも知れない。それでも、せめて、何も考えずに飛ばないように、それまでは一緒にいよう。

 ―――――いや、違うな。
 オレが一人になりたくないだけなのかも知れない。
 一人に慣れるまで、二人でいたいだけなのだ。
 とはいえ、この事に気が付いたところで、黒井が頷かなかったら何の意味もないけどな。


 表情に出さないように自嘲し、黒井に声を掛けた。 ・・・ 100 へ