SIDE:A / SIDE:B

 誘ったのは自分の方だし、レディファーストという言葉もある。この期に及んでレディファーストもないとは思うが、まずは彼女の話を優先するべきだと思い黒井が口を開くのを待った。
 1.5メートルほど離れた位置に座る黒井の表情を覗き込むが、俯いたままで一向に話し始める様子はない。まあ、急かすほど時間が無い訳でもないし、待つこと自体には何の問題もない。ただ、こうして何もしないでいると、自動的に自問自答が始まってしまう。

 今後どうすればいいのだろうか?
 今はいい。今は黒井が一緒にいて、彼女の話を聞くために待っている。
 今は待っていればいい。
 話しを聞いて、自分の話をすればいい。
 お互いの意見を交換することがあるかも知れない。
 だけど、その後は?
 その後は、何をすればいい?
 友達は失った。
 受験失敗した身で遊びに行くなんて考えられない。
 そんな資格もない。
 どうすればいい?
 夢も希望も失った。
 明るい未来なんて、どこにも無い。
 もう、本当に、お先真っ暗だ。

 10分以上も話し始めない黒井の様子を窺うと、彼女は足下の一点を見詰めたまま、ただ呼吸をしているだけだった。もしかすると、隣にオレがいることさえ忘れてしまっているのかも知れない。まずは、オレが自分の話しをした方がいいかも知れない。
 初対面で、今後二度と会うことがないかも知れない相手だ。だからこそ、全てを吐き出すことができる。自分がどんな状況なのか、どんなに理不尽な状況に陥っているのかを。



 まずは自分の話しを聞かせるために、渇いた口を動かした。  ・・・ 55 へ