「なんだよアイツ。いきなり俺に話しかけてきたかと思えば『描かせてください』とか……意味わかんねぇって」

　俺はアイツの手を振りほどいて小走りで体育館へ向かう。
　部活は休みだが自主練をしようと思っていたからだ。
　背の低い俺は誰よりも努力しなければいけない。そう思って中学生の時から練習に励んでいた。
　胸がザワザワして気持ち悪い。そんな時は運動すると落ち着く。
　用具庫の隅で素早く着替えてコートに出る。

「はぁ……」
　誰も自主練に来ないことに溜め息が出たわけじゃない。
　俺は、少し前に偶然SNSで見つけたネットをひとりで張る方法を動画で見ながら真似してやってみていた。

「おぉ、すげぇ。意外にちゃんとできんじゃん」
　思っていたよりも上手くできたことに感動した。
　俺はボールが入ったカゴを用具庫から出して近くに置いて、準備体操を始める。