ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

葉月(はづき)は、なにかやりたいことないの?」
『やりたいこと、か……』
 特にない、なぁー。
「行きたいところがあるなら、ついていくけど……」
『……ない、なぁー』
 ない。
 本当にない。
 そもそも、俺は自殺だ。
 この世に未練なんてない。
「それじゃあ困るんだけど……。はあー。琉偉(るい)のときは、もっとやりたいこととか行きたいところとかいっぱいあって、楽だったのに」
 なんか、申し訳ない。
「どうする?遊園地でも行く?」
『遊園地とか、修学旅行以来かも』
「え、そうなの?うち、めっちゃ行くけど」
『……俺は、あんまり行ってない。他の家族はよくいってたけど』
 ……あ、ヤバい。
 言っちゃった。
 どうしよう。
「え、っと、どういうこと?葉月(はづき)だけ、行ってない、ってこと?」
『まあ、そんな感じ。……ほら!中学の途中から勉強に力入れてたからさ、あんまり遊びに行ってなくて……。誘われても、断ってたんだよね』
「……井塚(いづか)とか(まこと)くんとは遊びに行ってたのに?」
『うっ……。なんで知ってるの?』
伊紗(いさ)ちゃんと実来(みくる)好歌(このか)ちゃんと松澤(まつさわ)さんと那々(なな)ちゃんと映画観に行った時に見た」
 う、バレてた……。
『知っ、てたん、だ……』
「まあね。……それで、どうする?遊園地行く?お金ならあるけど」
『じゃあ、そうしようかな』
「決まりね!いつ行く?次の土曜日とかにする?お母さんには友達と行くって言うけど……」
『いいよ』
「じゃ、また明日ね」
『え、明日⁉︎』
「そう、だけど……。どうせ暇でしょ?なら、少しでも遊びに行こうよ!……ほら、私、明日は行くとこあるしさー」
『まあ、確かに、暇、だけど……』
「明日、朝の9時に、遠宮志羽原駅集合ね!」
 ちょっと強引だな……。
 意外だった。
 雪宮(ゆきみや)って、もっと優しいイメージがあった。
 優しくて、自分の意見が言えないような人。
 そういうイメージ。
「……葉月(はづき)?いいよね?」
『え、あ、うん』
「じゃあね!」
 東常盤公園で別れる。
 俺の家は、東常盤公園の西側で、雪宮(ゆきみや)の家は、東側。
『また、ね……』
 ……雪宮(ゆきみや)、明日、どこに行くんだろう?
 聞いておけば良かった。
 いや、でも、「秘密!」とか言われそうだな。