ただ、君に笑っていてほしかった。

「じゃあねー」
「うん、またねー」
 雪宮(ゆきみや)は、1人でこちらに歩いてくる。
「やっほ!おまたせー」
『……1人、なんだ、ね』
「あぁー。他の子たちさ、ちょっと方向違うんだよね。だから、小学校の時から、私、ずーっと1人で帰ってた」
 ……確かに、雪宮(ゆきみや)は、中学の時、ずっと1人で帰っていた。
『なあ、雪宮(ゆきみや)。……なんで、驚かないの?』
「え?」
『ほら、俺、死んだじゃん。だから……幽霊、とか視えたら、普通、驚くかな、って』
 雪宮(ゆきみや)は、少し俯いた。
 だけど、すぐに顔を上げて、こう言った。

「私、これが一回目じゃないから。……一度、同じことを、体験したから」

『え……?』
琉偉(るい)、って憶えてる?真壁(まかべ)琉偉(るい)
『うん。同じサッカーチームだったから』
「アイツ、事件に巻き込まれて死んだでしょ?」
『ああ……、うん』
 そうなこともあったな。
 確か、無差別通り魔殺人事件に巻き込まれたんだったと思う。
「その時、アイツは私の前に現れた」
 琉偉(るい)が……。
 琉偉(るい)の笑顔を思い出す。
 アイツは、俺の憧れだった。
 足は速いし、技術も高いし、持久力もある。
 いつもスタメンで、羨ましかった。
 ……だから、正直、アイツが死んで、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、良かった、って、そう思ってしまった。
『そっか。琉偉(るい)が……』
「…………アイツ、私のことが好きだったんだって」
 え……?
 る、琉偉(るい)が……?
「びっくりでしょ?私、ほんとにびっくりしちゃって。告白されてから、ずっと避けちゃったの。……そのこと、ずっと後悔してて……。今度は間違えない、って決めたから。ちゃんと、一緒に最後まで、寄り添う、って」