ギャルっ娘パラダイス♪ 〜堅物女子高教師から異世界勇者に転生したオレに美人で極上ボディの異世界ギャルたちを連れてエッチでウハウハなハーレム旅をしろだと? よろこんで!〜

「無粋な女どもめ、私と勇者の戦いの邪魔をするな!!」

 狭間の空間(はざまのくうかん)から戻ったオレは、今まさに強欲帝アヴァリウスがアデリナたちに攻撃を仕かけようとしているところに出くわした。

 狭間の空間に行く前と状況はほぼ変わっていない。
 やはり向こうにいる間、現実世界では時間が止まっているのだ。

 オレは自分の身体の状態を確認した。
 折れた肋骨も元通り。気力体力、共にすっかり回復している。よし、行ける!

 オレはしがみついていた金の女神像からアヴァリウスに向かってジャンプすると、空中で腰から剣を引き抜いた。

 アヴァリウスはまだオレの帰還に気づかずアデリナたちの方を向いている。
 卑怯? 関係無いね! 魔族と正々堂々勝負するつもりなんか、さらさらねぇよ!!

「だったらよそ見なんかせずに、こっちを見ろやぁぁぁぁああ!!」
「勇者!? いつの間に!!!!」

 アヴァリウスがオレの存在に気づき、慌てて振り返る。
 だが遅ぇ! こっちの方が一手早ぇ!!

「吠えろ、シルバーファング! 第二の牙、灼熱剣(もやしつくすつるぎ)!!」

 アヴァリウスは何かに感づいたか、とっさに槍を横に構え、防御の形にする。
 だが!

 ジャカァァァァァァァアアアアアンンンンン!!

 高熱を帯び、光り輝くオレの剣は、アヴァリウスの槍を易々と両断し、更にアヴァリウスの胸の辺りを深々と切り裂いた。

 だが、黒靄(くろもや)が弾け飛んだだけで血は出ない。魔族の身体は服も含めて一体化しているからだ。だが、それでもそれなりに痛みは感じるらしい。

「ぬぅぅぅぅう!!」

 追撃しようとしたオレの剣は、痛みと怒りが混在した表情のアヴァリウスが繰り出した蹴りによって阻まれた。
 いや、足長いって! イケメンはこれだから!!

「がっ!! くぅ! 痛ぇぇぇなぁ、ちくしょう!!」

 腹を蹴られて吹っ飛んだオレは、ゴロゴロっと後ろ回転しながら体勢を整えた。
 クラウチングスタートの姿勢でグっとアヴァリウスを睨みつけたオレの目に入ったのは、完全に黒靄に包まれたアヴァリウスの姿だった。
 暗黒体(ダークネスボディ)だ。更なる強大な形態に変化するはず!

黎明(れいめい)前奏曲(プレリュード)!」

 グラフィドのときより遥かに早く暗黒体に変化したアヴァリウスの身体から、オレに向かって何本もの影槍(えいそう)が飛びだした。
 影槍が唸りをあげてオレに迫る。

韋駄天足っ(いだてんそく)!!」 

 だが、影槍には追尾(ホーミング)能力がついているのか、逃げるオレをどこまでも追ってくる。

 迫り来る影槍を振り向きざま一気に灼熱剣で断ち切ったオレは、(きびす)を返し、アヴァリウスに斬りかかった。
 
(あかつき)序曲(オーバーチュア)!」

 斬りかかるオレより一手早く、アヴァリウスが新たな影槍を繰りだしてきた。
 しかも先ほどの影槍が断ち切られたからか、今度のはヤケに太い!

 ギャリギャリギャリギャリィィ!!
「うおっとぉぉぉおお!!」

 アヴァリウスから飛びだした影槍は、今度は何本も()り合わさっていた。
 倍以上の太さになったせいか、さすがに硬くて斬れない。
 剣と影槍との間で無数の火花が散る。

 その時、どこからか飛んできた矢がアヴァリウス目がけて雨あられと降り注いだ。
 アデリナたちが攻撃を再開したのだろう。
 
 だが、アヴァリウスはオレとメインで戦いながらも背中から別の影槍を一本出すと、鞭のように操って矢をことごとく叩き落とした。全くもって隙がない。
 オレは逃げながら叫んだ。

「ユリーシャ! 今こそお前の力が必要だ! 全力でぶちかませ!!」

 アデリナたちに混じって恐怖におろおろしているユリーシャがハっとした顔でオレを見る。視線が合う。

 実際のところ、本気でユリーシャに何かができると思ったわけではない。
 でも、女神メロディアースはユリーシャにもフィオナ同様オレのパートナーになれるだけの潜在能力があると言っていたからな。まぁダメ元、保険みたいなものさ。
 それに、こうやって大声で指示したことで、アヴァリウスの意識がわずかでもそちらに向かえば大儲けさ。ケケっ。

「さぁそろそろ終わりにしよう、勇者クン! 避けられるものなら避けてみたまえ! (あけぼの)協奏曲(コンチェルト)!!」
「だっわぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」

 撚り合わさり強力になった太い影槍が、四方八方から何十本もオレに襲いかかってきた。
 それぞれ時間差があり、軌道も複雑に変化しつつ迫ってくるので、韋駄天足程度では予測して避けるのは不可能だ。
 といってこれを(さば)き切る自信はない。どれか一本でも当たった時点でゲームオーバーだ。

「えぇい、仕方ない! 制限解除(リストリクションリリース)!!」
  
 一声叫んだオレは、そのまま超高速戦闘モードに突入した。

 ◇◆◇◆◇ 

 制限解除が始まると同時に、頭の片隅にゲージが浮かんだ。
 制限時間は五秒。今までと同じだ。
 この五秒間だけ、オレは秒速三百四十メートル――音速で行動することができる。
 灼熱剣モードはまだ続いている。制限解除の間はギリ使えそうだ。

「行くぞ、シルバーファング! 第一の牙、蛇腹剣(ひきさくつるぎ)だ!! でりゃあぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 オレは剣の戦闘モードを重ねがけした。
 時の流れが限りなくゆっくりとなった空間の中で、刀身が灼熱に光る蛇腹剣が縦横無尽(じゅうおうむじん)に空を舞い、迫りくる影槍を一本残らず断っていく。

 力まかせではあるが、太くてもそこに止まって身動きしない影槍なら打ち砕ける。
 空を舞う影槍をことごとく叩き折った灼熱蛇腹剣がオレの元に戻る。

 オレはすかさずアヴァリウスの前に立つと、自身の腕の骨が折れ、血肉が飛び散るのも気にせず、制限時間いっぱい全力で斬りつけ続けた。

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 オレは全力でアヴァリウスに斬りつけながら、目を皿のように見開き、その体内にあるはずの魔核(デモンズコア)を探した。
 とうにアヴァリウスの頭は吹っ飛んでいるが、関係ない。

 魔族はオレ以上に驚異的な再生能力を持っている。
 心臓たる魔核と身体を構成する黒靄を切り離さないと死なないのだ。
 それこそ、身体が弾け飛ぼうが頭が吹っ飛ぼうが、そんなものまるで無視して永遠に復活し続けやがる。
 人間の身でそんなものに付き合えるわけもなく、こっちの体力の方が先に尽きて、ゲームオーバーだ。

 どこだ? どこだ!! ヤバい、制限時間がくる!!!!

 その時、ようやくオレはアヴァリウスの魔核を見つけた。
 グラフィドの時には心臓の位置にあったが、アヴァリウスの魔核は腹の位置にあったのだ。小細工しやがって!!

 ゼロ。駄目だ、時間切れだ!

「ぐあぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 能力が切れていきなり襲ってきた激痛に、オレは思わず剣を落としてその場で()け反った。
 あまりの痛みに呼吸さえままならない。

 制限解除はたった五秒間であるが、時間内、身体の限界を超えて動くことができる。
 秒速三百四十メートル――音速で移動できる脚力。
 岩をも断つ膂力(りょりょく)
 そして、壊れる身体を瞬時に治癒(ちゆ)する驚異的な回復力。

 だがその分、代償(だいしょう)も大きい。
 能力発動中感じなかった全ての痛みが能力終了後に、倍増した上、まとめて襲って来るのだ。

 オレは痛みに全身(さいな)まれ、その場で這いつくばりながら、驚愕に目を見開いた。
 頭が吹っ飛んでいるにも関わらず、アヴァリウスの大破した上半身が、まるで黒いアメーバーのようにグジュグジュと(うごめ)きながら元に戻ろうとしている。

 やっぱりここからでも復活しやがるのかよ。反則すぎるぜ……。。

 オレはこの後、全身を絶え間なく襲う激しい痛みのせいで気を失うだろう。
 例えアヴァリウスがこの復活によって体力を大幅に消耗していたとしても、気絶したオレの首を切断するのは赤子の手をひねるより簡単だ。
 ここでオレの旅が終わるのか?

 あきらめかけたその時、身体が着々と修復しつつある強欲帝アヴァリウスの動きが急に鈍くなった。
 見ると、地面から伸びた幾条もの光の縛鎖(ばくさ)がアヴァリウスの全身を縛りつけている。

失われた楽園(アーミーズィット パラディズム)! センセ、ユリちが全力で止めるから今の内に! 急いで!!」

 魔力による力比べが発生しているのか、ユリーシャが苦しそうな表情を浮かべつつ、血管が浮き出るほど強く銀色の錫杖を握りしめている。  
 
「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 オレは身体を引き裂かれそうな痛みを全力で(こら)え、修復しつつあるアヴァリウスの身体の中に手を突っ込んで無我夢中で魔核を探った。
 ゲル状の物体に手が包まれる感覚があり、とんでもなく気持ち悪いが、そんな事は言っていられない。

 オレが痛みで気を失うのが先か、アヴァリウスがユリーシャによる女神の呪縛を破るのが先か。
 と、指先に硬いモノが当たる。

「見つけたぁぁ!!」

 オレはグっと掴むと、ソレを引っ張り出した。
 直径三センチの真円の玉の中に、キラキラ輝く銀河が封じ込められている。

 次の瞬間、半分ほど修復されたアヴァリウスの顔が虚ろに、だが確かに意識を持ってオレを見た。

「強者よ、お前の勝ちだ。持って行け」

 痛みを一瞬忘れ、驚愕の表情を浮かべるオレの目の前で、アヴァリウスの身体が木っ端みじんに弾け飛んだ。
 アヴァリウスの身体を構成していた黒靄の欠片は四方八方に飛び散り、やがて淡雪のように静かに消え去った。
 それを見たオレの意識もプツンと途絶え、闇の中に飲み込まれた。