彼女は、突然来た。
何の前触れも無くやってきた。

















『キーンコーンカーンコーン』



ホームルームが始まる事を知らせるチャイムが鳴った。いつもは、もう担任の田中先生が来ているはずなのに今日はまだ来ていない。

僕はおかしいなと思いながら、窓を見る。
とても暑そうだ。この暑さを強調するように蝉がじりじりと鳴いている。今日の体育もきっと暑いだろうなとひとりでに考えてると、ガラガラと音を立てて扉が空いた。


「遅くなってすみません。」

「いきなりですが今日は転校生が来ます。」


田中先生が気だるげに言う。というか、田中先生は大抵いつも気だるげだ。
でもクラスメイト達は嬉しそうにはしゃぐ。

「杏奈ちゃん、転校生って男の子?」

女子生徒が嬉しそうに聞く。

「こら、先生をちゃん付けしない。」

杏奈ちゃんとは、田中先生の事だ。数年前に教師になったばかりで若いから友達の様に慕われている。まあ、それは一軍女子に限るが。僕みたいな三軍男子は、杏奈ちゃんなんて到底呼べない。というか、別に呼びたいとも思わない。

「入ってください」

田中先生は女子生徒の質問には答えず、廊下に向かって呼びかけた。



教室の出入り口から入って来たのは、

女の子だった。