普段通りパートごとに並んでいる


音楽室内の部員達。


普段通りじゃない事といえば、


音楽室の隅に背の高い男の先生が座っている事。


グレーのスーツを着て、


年齢は二十代くらいだろうか。


かなり若そうな見た目をしている。


きっとあの人が新しい顧問の先生だろう。


そんなにゆっくり来たつもりはないんだけどな。


今日に限って、みんなが集まるのが早すぎた。


いや、今日だからこそ、か。



「この2人で最後かな?」



その先生が口を開いた。



「そうです!」



部長の先輩が返事をすると、


その先生が立ち上がって


正面の真ん中へ動いた。



「初めまして。


藤木(ふじき)悠真(ゆうま)です。


楽器はクラリネット、


今年から吹奏楽部を担当します」



その先生の第一印象を言うならば、弱そう。


声は全然大きくなくて、むしろ小さいぐらい。


柔和そうな笑みを浮かべてこちらを見ている。